月別アーカイブ: 2020年7月

リハビリテーションの充実に向けて

みなさんこんにちは。
もうすぐ梅雨明けですね。今年は久しぶりに雨の多い梅雨であったと感じました。カタツムリも久しぶりに見た様な感じがします。梅雨明け前には近年お決まりの様に、豪雨災害が起こります。被災された方々の苦痛を思うととても人ごととは思えないですが、今年はコロナのこともあり本当に落ち着かない日々ですね。

さて、わたしたちのクリニックの大きな特徴であるのが、超音波検査機器(エコー)を駆使した診断治療です。特に、疼痛部位へのターゲッティングにはエコーが大きな威力を発揮してくれています。


癒着部を薬液注入で剥がしたり、疼痛部位をエコー下で確認しながら重積部を治療したり本当に頼りになる相棒ではあるのですが、やはりそこには、まだ満足しきれない部分も多々存在しているのは事実です。


そこで、重要なのが人の手の施術による、さらなる追加治療です。
問題となる疾患部分を注射だけではコントロールできないことも多いですので、理学療法士と共同で治療を進めることが、わたしたち手術を行わない医療者としては最大限の効果を提供できる治療方法となります。
特に、現在力を入れております、肩関節疾患に対する筋膜リリースを組み合わせた治療に関しては大きな効果が期待できる様に考えます。

本当に偶然が重なったこともありますが、今回、以前から親交のある理学療法士さんとのご縁で、週1回だけではありますが、共同で治療に当たれる体制を作ることができました。


8月21日 金曜日より 毎週金曜日終日、理学療法士さんが常駐してくれます。実は、本稼働の前に、プレとして本日ともう一日 、
診療に入っていただくことにしています。
今日はその記念すべき第一日目でした。
早速、数名の方に治療とアドバイスをしていただき、わたしだけでは提供できない世界を示してもらえて、本当に良かったと思いました。

以前、リハビリテーション病院で管理者をしていた時から強く感じていたことですが、やはり、人の手の治療は違います。患部に添えられている手の雰囲気でもう、治療への道が開いている感じを受けるのは、今回も全く同じでした。
まだまだ、体制としては不充分で、わたくしたちのクリニックも組織として未熟なため、理想の医療の提供には程遠いものがありますが、思いの他早く、ステップを上がっていける手がかりがついた様に感じました。
当面、理学療法士さんの治療は予約で運用したいと考えています。医師の診察を行った上で、アプローチを考慮させていただきたいと思っております。ご理解のほどよろしくお願いいたします。


歩きましょう!

みなさん、歩いていますか。


いきなりですみません。うちのクリニックのモットーでも歩くことがテーマになっていますが、私がこの2年ほど持続的に取り組んでいるのがウォーキングなんです。

早朝の運動はよくない(睡眠時の脱水が改善するまで1時間以上かかります。その期間に汗をかくと、より脱水が進むので、脳梗塞や心筋梗塞の呼び水にもなりかねませんが)とは言いますが、時間の関係上早朝にウォーキングをしています。

 
きっかけは太りすぎたこと。昨年は診療所の所長をしていたのですが、93㎏まで体重が増えてしまい、メタボリックシンドロームの指導を患者さんにするときの説得力がゼロになってしまっていました。これではいかん、と一念発起し歩き始めました。水泳は金づちでむり、ランニングは膝を痛める、テニスやゴルフはそもそも時間がない、ライザップはリバウンドするしということで、消去法で決めたようなものでした。

最初は10分歩いたら顎が上がってしまい、心臓バクバクでダメでしたが、徐々に時間が歩けるようになり、またスピードも上がり、1km9分前後で歩けるようになりました。
調子乗りすぎて2時間くらいあるいたり、歩きすぎてシンスプリント(下腿のいたみ、つかいすぎです)になったりいろいろしましたが、
途中でアシックスのスポーツ工学研究所の書籍に出会い、徐々にスタイルを修正していきました。


最もインパクトのあった出来事はスピードウォーキングの考え方です。1Km7分で歩くこと(競歩は5分くらいだそうです)が走ることよりもカロリー消化が大きくてしかも、ウォーキングなのでランニングより運動器に負担をかけない優れた運動法であるということを知り愕然としました。

持続的に7分で歩くのはまだ、私も体ができていないので無理ですが、インターバルトレーニングといって通常のウォークの中で何分か7分歩行を取り入れるやり方を実行しています。


そもそも、間違っていただきたくないのですが、運動で痩せようなどと思わないでください。例えば、減量のために運動だけで対応する場合は、週3回2時間以上クロールでの水泳を行わないと体重は落ちません。こんなんできますか?私には絶対無理です。もう部活ですよ、これでは。
運動の意味はやせやすい体を作ることです。筋肉を増やして、静止時のエネルギー消費を上げ(基礎代謝を上げることです)、脂肪の燃えやすい体にすることが大事なんです。あとは食事に気を付けること。

クリニックにも掲示していますが簡易カロリーコントロールである手ばかり法を用いて、概算の1日のカロリーをイメージします。無理のない食事量の制限は最後の一口を食べないです。これでおおよそ1日200カロリー少なくでき、ひと月6000カロリー減らすことになります。これで体重1kg分です。

こうして増えたり減ったり、停滞したりして1年間で14kgやせました。
ただし、ご多分に漏れずコロナ太りしてしまい4kg戻ってます。今月に入ってまたウォークも再開できているので、また次は70kg目指して励もうかと思っています。

私のウォーキングのお供は、アップルウォッチとスマホアプリのあるくとです。

ともに、調子に乗せてくれるのでついつい歩きすぎてしまいますが、一日の歩行時間の目安はできれば40分までが良いと思います。また歩数も7000程度が良いのではないでしょうか。

20万歩を1カ月に超えて歩行継続すると運動器に障害が出やすいという報告があります。

 

ウォーキングはランより、ダサい感じがしますが私は大好きです。
あるいているとどこまでも歩いて行けそうな気がしてワクワクします。かきすぎない汗もちょうどいい感じですし、爽快感はすばらしものですよ。それに何といっても、時間や季節によって変わっていく空の色や、周りの風景、歩くスピードで初めて見える町の景色など、家いろんな素晴らしい体験を身近でさせてもらえます。

 

あるくのって、いいですよ。どうですか?
靴をそろえて、ウエアを選んで、ドリンクをもって、飛び出してみませんか?


メタボリックな疾患 ~その1 脂質異常症

皆さんこんにちは。
以前に、特定健康診査のお話をいたしましたが、非常事態宣言解除後、当クリニックでも三々五々と患者さん方が受診してくださっているので、地域の健康を預かるものとしてはたいへんうれしいことです。

今回はメタボリックシンドロームのお話をしようと思います。なぜメタボリックの第一弾のお話を超コモンである高血圧にしなかったかというと

どうも毎日診療していて、脂質異常は、比較的患者さんが重要視しておられないような気がしてならなかったからです。

もともと、高コレステロール血症とか高脂血症などと呼ばれてていた脂質異常症ですが、いわゆる善玉コレステロール(HDL-C)が低値である場合も人体には脅威を与えるため、高脂血症という名前だけでは都合が悪いため、名称改定を受けたわけですが、どうも語感のインパクトが弱くなったような気がします。

もともと、自覚症状が出にくい疾患なので(逆にいえば、自覚症状が出るころには遅い!)漫然と治療している感覚に陥りやすく、場合によっては自己判断で治療をやめてしまうこともあります。

特定検診受診時に、脂質異常症の治療をする意味をよく知っていただくのが良いと思いますが、なかなか時間的な余裕もないので、今回は脂質異常症の治療意義をあらためてお伝えするつもりで書きました。

脂質異常症を治療しなければならない理由は、それが心筋梗塞や脳梗塞、閉塞性動脈硬化症などの動脈硬化性の疾患につながるからです。上記の疾患だけで総死亡率の約30%を占めています。


早期に治療を行うことで動脈硬化がひきおこす病気の予防が可能になります。また、適切に治療すると動脈硬化性の変化を改善することが可能です。放置するとどんどん動脈硬化は進行します。

特定検診や一般の検査で良く測定されているのがTG(中性脂肪)とHDL-C、LDL-Cです。
後者2つは善玉、悪玉コレステロールと呼ばれています。

いずれにしても、上記の脂質異常症が存在した場合は

① 現在の動脈硬化はどの程度か
② 治療をどうするか

が今後のケアを考えていくうえで重要になります。

① は血圧、
上下肢の血圧比(ABI)、
頸動脈エコー
でそれぞれ動脈硬化の現状を数値的、視覚的に評価するとよいでしょう。
ABIは半年に1回、頸動脈エコーは年1回程度が妥当と考えます。いずれも当院で施行可能です。

また、2次的な脂質異常症も数多く存在しています。例えば
肝機能障害、
甲状腺機能障害、
腎障害、
糖尿病、
飲酒、
ある種の膠原病、
利尿薬
降圧薬(β遮断薬)、
ステロイドなど
によって引き起こされるものが有名です。それらを意識しながら治療へと進みます。

② メタボリック症候群の治療の基本はいつでも
生活習慣と食事習慣の改善
がベースになりますが、私も以前LDL-Cが高くて運動と食事でトライしましたが無理でした。どうしてもきっちり下げていこうとすると薬剤の助けが必要になるようです。
もちろん、どんな治療でもそうですが生活改善なしに薬だけで治療しようとするとなかなか薬剤の効きがよくないので、必ず、食事制限や運動は必要です。

運動に関しては厚労省が提唱している
+10分運動
が取り入れやすいです。普段の生活の中で毎日10分余計に体を動かすことから始めようという試みで、体を動かすことが苦手な方でも無理なく運動負荷できると思います。

食事に関しては細かいことになると栄養士さんにかなわないですが、
卵や牛乳のとりすぎ(卵なら1日1個まで、牛乳なら1日コップ1杯までを目安に)
砂糖、炭水化物のとりすぎ
に注意することは外来でお伝えしています。
またトータルカロリーのコントロールとしては
手ばかり法
が簡単です。待合に掲示していますので来院時にご覧になってください。

治療は薬剤によるものがやはり中心になります。
LDLが高い場合、
LDLとTGが高い場合、
TGだけが高い場合、
HDLが低い場合
それぞれに選択する薬剤が異なります。
副作用としては肝障害と横紋筋融解症が有名で、定期的な血液検査でのフォローが必要ですので、嫌がらずに検査してください。
また妊娠中の女性にはスタチン(LDLを下げる薬)というお薬は催奇形性のため適さないので注意が必要です。
スタチンには糖尿病を増加させるとの報告もありますが1000人に一人程度ですので気にしすぎる必要はないと判断されています。

脂質異常症の予防効果としては、スタチンを用いた治療でLDLが約40低下すると、心臓の冠動脈(心臓の血管、つまると心筋梗塞をおこします)疾患は20%程度の減少、脳卒中は15%程度の抑制が認められます。

管理していくうえでの具体的な数値目標として、正常値を示します。
中性脂肪(TG)は150以下、
LDL-Cは140以下、
HDL-Cは40以上
です。
予防の目標としては、個人のもつリスクによってその目標値は変化します。
リスク設定は年齢や、性別、喫煙歴、高血圧や糖尿病の程度、家族歴などを加味したスコアによって決定されます。
TGの目標はすべてが150以下です。
LDL-Cでは
低リスクの場合のコントロール目標は160以下(検査上の正常値の上限を超えています!)
中リスクの場合は140、
高リスクの場合は120以下です。低リスクでも180以上のLDL-C値が続く場合は投薬を推奨されています。
疾患罹患後の2次的な予防は100以下ですが、冠動脈疾患のある場合はなんと70以下になります。
状況によってまちまちなので、注意してください。

当クリニックでは、外来受診の際にリスク確定のために、治療中の方にもリスク因子のおたずねを行っています。リスク決定は簡易法で主に行い、
5つの危険因子(喫煙、高血圧、低HDL-C血症、耐糖能異常、早発性冠動脈疾患家族歴)
をもとに年齢と男女差でリスクが決定されます。

以上、脂質異常症の診療概略を書かせていただきました。

当クリニックではできるだけ、ガイドラインに準拠した形で皆様へ医療を提供できるよう心がけています。大病院へ行かなくても、大阪市内に行かなくても身近な場所で日本標準の治療が提供できるよう常に心がけています。