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運動と健康を愛するあなたはスポーツ内科をご存じでしょうか

 

皆さんこんにちは。猛暑とコロナのため、スポーツどころではないよとおっしゃる方も多いかもしれませんが、今回は少し耳慣れないお話をしてみようと思います。
お題はスポーツ内科です。


当院は内科を第一標榜としておりますが、継承させていただきましたクリニックさんが整形外科メインでしたので、整形外科疾患の方も数多く来院されております。


スポーツといいますと、誰しもが、筋骨格系の障害をイメージし、かかる医療機関は整形外科という印象を持つと思います。

血液まで調べてメンテナンスするのは、トップアスリートだけという感覚は誰しもがお持ちかと思いますが、健康志向が強くなっている昨今では、低年齢から高齢者まで幅広い方が何らかのスポーツを常時愛好されている状況になっています。


疾患をお持ちで、病院に通いながら、あるいは、年1回の健康診断を受けておられてスポーツを愛好している方は、内科的なメンテナンスを受けながら運動しているのである意味、スポーツ内科受診者と考えてよいでしょう。
問題は、検診などに縁がない若年層のスポーツ愛好家です。特にクラブ活動などを熱心に行っている年齢層に注意が必要であると思います。

息切れ、走ると咳が出る、疲れが抜けない、運動するとおなかが痛くなる、無月経になった、胸が苦しいなどが運動愛好家から外来で寄せられやすい症状になります。
以下に、代表的な症状を上げて説明していきます。
息切れは、循環器系、呼吸器系の異常がないかを調べますが、その際にスポーツ貧血を考慮する必要があります。


スポーツ貧血とはスポーツによって生じる貧血で、有病率は5から20%と言われています。原因としては鉄欠乏と利用可能エネルギー不足(RED-S)が上がります。治療としては栄養管理と鉄剤投与が行われます。

走ると咳が出る場合は運動誘発性気管支収縮(EIB)を考慮しなければなりません。喘息がなくても発症する可能性があります。一般集団で20%程度の有病率があると考えられ、持久系の種目において有病率が高いといわれています。治療は、運動前の十分なウォーミングアップと吸入療法になります。吸入薬にはドーピングで問題になる薬剤もあるので注意が必要です。


運動時におなかが痛くなる場合はETAP(運動関連性一過性腹痛、サイドスティッチ)を考慮します。予防としては、運動開始前2時間以内の食事摂取に気を付けること、炭酸や高張液の接種を控えることが必要です。

疲れが抜けない場合は、過剰なトレーニングの繰り返しのためパフォーマンスが落ちている可能性を検討しなければなりません。慢性疲労状態が継続し、場合によっては回復に数か月を要することもあります。トレーニングとしての理想形は負荷をかけたトレーニングの回復過程に起きる超回復期を利用して次の負荷をかけ、運動強度・耐要性を増強させることです。超回復期を待たずに負荷をかけ続けると過剰なトレーニングになってしまいます。これをオーバートレーニング症候群(OTS)と呼び、OTSの精神症状はうつ状態と大変類似しています。明確な診断基準はありませんが、気分障害をともなう原因不明のパフォーマンス低下で4週間程度休養を取ってもパフォーマンスが戻らないことが症状として挙げられています。治療は完全休養とストレスの除去になります、場合によっては精神科医のサポートも必要となってきます。


これらの様々な症状が、スポーツに伴い生じてくる可能性があり、どうしようもなく悩んでいる方も多いと思います。悩まずにぜひご相談ください。運動に伴う体の障害は、筋肉や骨だけではないことを意識していただければ幸いです。