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免疫力を上げるには 最終回 フレイルとの戦い

全く同じテーマで、延々書きつづっていますが、今回最終回です。

大阪府下も新規のコロナウイルス感染者がぐんと減って、先が見えてきた感じはありますが、緩和による第2波への懸念も消えないため
当院でもまだまだ非常事体制でコロナウイルス対策に取り組んでいきます。

さて、長期の自粛のため屋内に引きこもりがちになっている方も多いように思います。当院への患者さんの足取りも重いものとなっており、本当に息が詰まるような日々を肌で感じさせられています。

ようやく、非常事態宣言が解除されたといってもコロナ危機が去ったわけではありませんので、こんな時には屋外に出かけるのが本当に怖いですが、そのために運動不足になることが大きな問題になってきています。
表題のフレイルですが、脆弱、虚弱という意味で、まさに、いま多くの方が直面している運動不足による心身の虚弱化を表しています。

筋力低下(ロコモティブ症候群、サルコペニアなどという言葉をお聞きになったことがあると思います)が起こることで、活動性が低下し、基礎代謝が低くなり、さらに食事もとれなくなり、また筋力が低下していくという悪循環が形成されフレイルの状態が進んでいくと考えられています。

ひきこもりを余儀なくされ、感染の恐怖のため心身共に疲弊し、フレイルの良くないサイクルの中に引き込まれていき、どんどん食事もとりづらくなってくると、腸管免疫も低下します。
このようなコロナ禍の事態を全く予期していなかったのですが、わたくしは以前より健康生活を送るための筋肉と骨の重要さ、日常の生活の質(ADL)の低下のため免疫力の低下が生じることなどを講演などでお話してまいりました。


当院ではクリニカルモットーとして【いつまでもじぶんのあしであるくために】を掲げていますが、皆さんにフレイルに陥らずに快適な生活を送っていただきたいという強い思いが込められています。筋力低下は最終的に全身機能が低下して寝たきりの状態に至ります。長期臥床状態になると免疫力低下のため感染症によって命が奪われることも多いのです。
厚労省も提案していますが、日ごろのからだの動きプラス10分の運動が健康な毎日につながります。勇気をもって外に出て(もちろんしっかり感染対策をしてください)、10分間でよいので運動をしましょう。
筋肉を使い、骨を強化し、体幹が丈夫になることで日常生活の活動状態(ADL)が向上します。よいADLを保つことがフレイルを防止し、免疫力の低下を極力抑えることにつながるため、意識して運動していただく必要があります。
とにかく運動をしましょう。少しでもいいから身体を動かしてください。そしてしっかり食事をとってください。
コロナウイルスの治療法が未確立である今は、身の回りでできることを懸命にこなしていくことが大切だと考えます。
未曽有の災害をもたらすコロナウイルスに負けない暮らしを、できるところから始めましょう。


免疫力を上げるには~第一回 善玉菌の活用

コロナ感染症一辺倒の毎日になっておりますが、いかがお過ごしでしょうか。コロナ自粛がありストレスも大いに溜まってきているところと思います。

また、ウイルスに対する有効な薬剤やワクチンの開発もまだまだかかりそうな状況で、個人に備わっている免疫力が唯一の頼りである日々はいまだしばらく続きそうです。

 

人体に備わっている免疫を担当する細胞たちの約60%は実は腸の粘膜内に住んでいます。この細胞たちは日々体内に取り込まれてくる異物と腸内で接触して切磋琢磨しており、腸内環境と免疫機能は密接にかかわりあっていることが近年明らかになってきました。
腸内環境で肝心なことは、
1)腸粘膜のコンディション
2)腸内細菌叢の状態
です。
1) は食事をきっちりとることで整えられていきます。病気などでしばらく食事がとれない時期が続くとあっという間に腸管粘膜がうすくなり衰えてしまうことが知られています。それは免疫細胞のすみかがなくなることを意味しており、60%の免疫細胞のすみかを失ったからだは、免疫機能が極端に低下してしまいます。それだけ、口から食事をとることは大事であり、内容はともあれ、できるだけバランスの良い食事をきちんととることが免疫維持に重要な意味をもってきます。
食事は栄養面だけではなく免疫にも関係しているので、健康の基本であることが分かっていただけるとおもいます。

元気な善玉菌のイラスト
2) は、最近よくテレビなどでも取り上げられる【腸活】のトピックです。人間の腸の中には多種多様な細菌が住んでおり(腸内細菌叢といいます)、そのバランスが保たれていることが免疫細胞の働きに重要な役割を果たしています。

腸内細菌叢のバランスを保つのに非常に大きな役割を果たすのが、乳酸菌やビフィズス菌などの善玉菌と呼ばれている菌類で、乳製品の発酵食品に入っているものです。皆さんになじみの深いものとしてはヨーグルトであったり、またヤクルトのような乳酸飲料がそれにあたります。これらの善玉菌が産生する乳酸や酢酸が腸内環境を弱酸性に保つことでいわゆる悪玉菌を減らし腸内細菌叢の適切なバランスを保ちます。

善玉菌投与の効果は科学的にも実証されており、例えばインフルエンザにかかりにくくなったり、その症状の軽快につながる、または、ノロウイルスによる腸炎の症状を軽くしたりするという結果が報告されています。

善玉菌を摂取するだけでなく、善玉菌の生育環境を整える手法があります。善玉菌をより効果的に活躍させるためには、食物繊維をたくさんとること(野菜をたくさん食べましょう)と、摂取する糖分を善玉菌のごはんであるオリゴ糖に変えてやることがよいとされています。

善玉菌+食物繊維+オリゴ糖はよりよい腸内環境の方程式です。その答えは免疫強化として現れてきます。明日からでもできる免疫強化法ですのでぜひ取り組んでみてください。興味を持たれた方は、外来でご説明いたしますのでお声掛けください。

皆さんも、腸内環境を整えて、免疫力の強化を行いましょう。ちなみに、コロナ自粛でストレスをためるのは免疫にマイナスに働きますので、上手にストレスをかわす方法も考えてくださいね。

第二回 漢方薬の効用へとつづきます。