月別アーカイブ: 2020年12月

論文発表

我々のクリニックに関連して、新たな論文が発表されましたのでご報告いたします。

Three-dimensional simulation analysis of microdissection testicular sperm extraction for patients with non-obstructive azoospermia.
Kentaro Ichioka, Yoshiyuki Matsui, Naoki Terada, Hiromitsu Negoro, Takayuki Goto and Osamu Ogawa
Andrology 2020 8:1214-1221, 2020

久しぶりに市岡自身で論文を書きました。当院では「顕微鏡下精巣精子採取術」を積極的に行っていますが、どのように手術をするのが最も好ましいのか、科学的アプローチによって明らかにされることがありませんでした。今回、精巣の3Dモデルを用いて数学的に解析を行い、それによって導き出された最も良い方法を当院の10年間にて検証した結果をまとめたものです。ようやく陽の目を見た研究です。

かつて、手術の分野においては、白い巨塔の財前教授のような一部の「神の手」による手術がもっとも素晴らしいとされていて、その手術の要諦はセンスと経験といった漠然とした説明がなされていた時代がありました。今日、腹腔鏡手術やロボット手術が登場した手術分野では、かつての「神の手」による手術も言語化されて解説されるようになり、かつては難易度が高いと言われていた手術も、もはや一部の特権的医師だけのものではなくなり、一般化、標準化が進むことにより全体的な医療の発展につながった歴史があります。

我々の論文を契機に、「顕微鏡下精巣精子採取術」ももっとオープンになることを期待しています。他の雑誌の査読者に「microTESEは専門的技術こそが命なのであって、3Dモデルとか訳分からんことをゴチャゴチャ言われてもやね云々…(関西弁に翻訳)」と言われたことが非常に残念でした。あんたが公表しないからやろ!と言いたかったです。


論文発表

我々のクリニックに関連して、新たな論文が発表されましたのでご報告いたします。

Rapid semen identification from mixed body fluids using methylation-sensitive high-resolution melting analysis of the DACT1 gene
Shuntaro Fujimoto, Yuya Hamano, Kentaro Ichioka, Sho Manabe, Eriko Hirai, Osamu Ogawa and Keiji Tamaki
Legal Medicine 2020 Nov 4;48:101806. doi: 10.1016/j.legalmed.2020.101806. [Online ahead of print]

京都大学医学部法医学教室、玉木教授のグループとの共同研究です。よく犯罪の報道などで「体液」という表現を目にすることがあると思います。これは、証拠として採取された遺伝子がどんな体液由来であるかが分からなかったから、だそうです。体液と言っても内容は様々で「唾液」「尿」「精液」など様々ありますが、本研究にて新たに開発された手法によると、精液由来であるとすぐに判別ができるようになります。画期的ですね。
当院では他の研究機関との共同研究も積極的に行っています。患者さんにご協力をお願いすることがありますが、ご理解を頂きたいと思います。


学会報告

学会報告
我々のクリニックに関連して、新たな学会発表を行いましたのでご報告します。
2020年12月3日
男性不妊症例における47XXY低頻度モザイクには臨床的意義がある
第65回日本生殖医学会総会 WEB開催
市岡健太郎

これは、無精子症などの重症の男性不妊症の患者さんに時にみられる、クラインフェルター症候群という病気に関する研究です。このクラインフェルター症候群の一亜型に関する新しい知見を発表しました。今回の学会はWEB上で開催され、発表も事前に録画したものがオンデマンド形式で配信されます。録画の際に噛みまくり、何回も撮り直しをしました。自分の活舌の悪さを実感しました。