論文発表

我々のクリニックに関連して、新たな論文が発表されましたのでご報告いたします。

Three-dimensional simulation analysis of microdissection testicular sperm extraction for patients with non-obstructive azoospermia.
Kentaro Ichioka, Yoshiyuki Matsui, Naoki Terada, Hiromitsu Negoro, Takayuki Goto and Osamu Ogawa
Andrology 2020 8:1214-1221, 2020

久しぶりに市岡自身で論文を書きました。当院では「顕微鏡下精巣精子採取術」を積極的に行っていますが、どのように手術をするのが最も好ましいのか、科学的アプローチによって明らかにされることがありませんでした。今回、精巣の3Dモデルを用いて数学的に解析を行い、それによって導き出された最も良い方法を当院の10年間にて検証した結果をまとめたものです。ようやく陽の目を見た研究です。

かつて、手術の分野においては、白い巨塔の財前教授のような一部の「神の手」による手術がもっとも素晴らしいとされていて、その手術の要諦はセンスと経験といった漠然とした説明がなされていた時代がありました。今日、腹腔鏡手術やロボット手術が登場した手術分野では、かつての「神の手」による手術も言語化されて解説されるようになり、かつては難易度が高いと言われていた手術も、もはや一部の特権的医師だけのものではなくなり、一般化、標準化が進むことにより全体的な医療の発展につながった歴史があります。

我々の論文を契機に、「顕微鏡下精巣精子採取術」ももっとオープンになることを期待しています。他の雑誌の査読者に「microTESEは専門的技術こそが命なのであって、3Dモデルとか訳分からんことをゴチャゴチャ言われてもやね云々…(関西弁に翻訳)」と言われたことが非常に残念でした。あんたが公表しないからやろ!と言いたかったです。