「どんな食事が最も健康に良いのか?」は常に気になっているテーマです。
書店で偶然手にしたこの本「科学者たちが語る食欲」はシドニー大学の栄養学者と昆虫生物学者の著書の日本語版で、とても読みごたえがありました。
序章で南アフリカに住む一頭のヒヒの食事を30日間記録した研究の話が出てきます。
このヒヒはその間90種類の食物を食べましたが、驚くべきことに、食事中のタンパク質/脂肪・炭水化物比は常に1:5に保たれていました。
野生の生物は手に入るものを適当に食べているように見えて、実はタンパク摂取比率が一定に保たれるように自然に食べているというのです。著者らはこの現象を粘菌、昆虫、ラット、サルで確認しています。
「あらゆる生物はタンパク質必要量を摂取するまで食べる」、「タンパク質欲が他の栄養素の過剰/過少摂取を規定する」ということで、ヒトの場合はタンパク質の適正量は総カロリーの約15%らしいです。
そのため現代の高糖質・高脂肪・低タンパクの超加工食品の多い食事だとタンパク質欲求を満たすため食べ過ぎて全体のカロリーが増えて肥満になり、逆に高タンパク食で体重が減るのはただ総摂取カロリーが減るからだけだ、というのか著者の考えです。
またタンパク質の摂りすぎの害もあり、マウスの実験では低タンパク/高炭水化物で長寿に、逆に比較的高タンパク/低炭水化物で繁殖が良くなることが書かれています。
確かに我々の普段の食事でも肉か魚がないと何となく食べた気になりません。この「タンパク質欲求」という視点で食事を考えてみたいと思います。
この本の原題は「Eat Like The Animals (動物のように食べろ)」でした。