月別アーカイブ: 2021年5月

日本内科学会生涯教育講演会

210530

今日は朝から日本内科学会生涯教育講演会Aセッション(オンライン開催)で参加しました。40分の講演が7つあり、オンラインとはいえ疲れました。演題名と特に印象に残った事を少々。

1、膵癌の危険因子と早期診断 東北大学病院消化器内科 正宗 淳 先生

・よく使われるCA19-9は膵癌診断2年前から上昇しているという報告あり。

・糖尿病の膵癌リスクは1.97倍。特に急に血糖が上昇したら検査をする。腹部エコーで膵管拡張と膵嚢胞をみる。

2,消化器がんの薬物療法 愛知県がんセンター薬物療法部 室 圭 先生

3,内科医による認知症診療 山形大学第三内科 太田康之先生

・長谷川式簡易知能評価スケジュールでは総点数だけでなく、①日時の見当識、②3単語の遅延再生、③5つの物品記銘、を重視する

・アルツハイマー型認知症の15-20%では病理像がアルツハイマー病でない。

4、実地医家の為の喘息診療 近畿大学 東田有智先生

・喘息の診断は、気道可逆性と過敏性試験でも不十分。

・①喘鳴の訴え ②症状の日内変動 ③症状の繰り返し ④アレルギー疾患の既往 ⑤アレルギー疾患の家族歴 ⑥聴診で喘鳴 の6つで診断する。

5、関節リウマチ診療ガイドライン 京都府立医大 川人 豊 先生

6、COVID-19に関する最近の話題 聖マリアンナ医科大学感染症学高座 國島 広之先生

・PCR検査はCT値(陽性までの増幅サイクル数)でみている。つまり高いほど少ないウイルス量まで感知している。低いほど死亡率、重症化、感染性と関連する。日本は40、中国は37で陽性としている。

・感染リスクは手指衛生で1/3、マスクで1/6減少すると言われている。

・ワクチン接種後の中和抗体は、海外データで半年で90%以上ある。おそらく1年は有効ではないかと思われる。 ただし高齢者の方が抗体は減りやすい。

 

 


急変”前”徴候

210508

5月1日、「21世紀適々斎塾」という開業医の先生方が主宰する医師・医学生向けセミナ―をオンラインで受けました。

今回は特別セミナーで札幌医大総合診療学講座の佐藤健太先生の「慢性臓器障害の診かた、考え方」でした。

慢性臓器障害とは日本のCommon disease(ありふれた病気)で主要な6大臓器障害の総称」で、心臓・肺・肝臓・腎臓に年齢の影響が大きい脳と運動器障害を加えた6つを含みます。従来の臓器別の縦割りでなく、6つの臓器障害を横並びで見るという新しい視点を主張されました。

もちろんこのセミナーの主旨に共感するところは大きかったのですが、あえて今回の学びは「急変前徴候」とします。

心筋梗塞など突然起こる心血管系の病気や、肺炎などの感染症の症状や所見が完成する前に漠然とした体調変化が起こるということです。

私の経験でも、患者さんの状態が急に悪くなる前にむしろ元気が出てきたように見えたり、病気としては説明のつかない症状が現れることがありました。

多くは後から振り返って「あれは前兆だったのか?」と思うのですが、可能ならばその前兆の時に悪化しないように対処したい。

急変前徴候は以下の3つです。

①     痛みから起こる自律神経症状:吐き気、腹部違和感、便秘、軟便、脂汗、手足の冷感など

②     冬眠様行動:感染症の前に、体の活動が低下して寝たきりがちになる、デイサービス・食事拒否など

③     せん妄:わけのわからないことを言う。高活動型(興奮・妄想・徘徊など)と低活動型(眠りがち、反応が乏しくなる)がある。

これらが重い病気が起こる数時間から数日前にみられるということです。

こういった徴候があったら必ず重大な急変が起こるという訳ではないのが難しいところですが、「今までになかった変な症状」が出てきたら要注意です。