今月13日日曜日に地域の連合老人会「すえなが会」で講演をしました。今年頂いたお題はこの「サルコペニア」で、正式な意味は「高齢期にみられる骨格筋量の減少と筋力もしくは身体機能の低下」ということですが、非常に俗っぽく簡単に言うと「年がいって足腰が弱ってくる」状態、ということになります。 今まで「高齢になれば足腰が衰えるのは当たり前」と考えられてきましたが、「いやいやこれも一種の病気だから治すべきだ」というわけです。
これは日本人の平均寿命は伸びたものの、健康寿命(健康上の問題がなく日常生活を送れる期間)が追い付いていない(男性で約8年、女性で約12年の差がある)ので何とかしなければならない、という考えから来ているものですが、簡単には老いられない時代になってきました。
講演ではサルコペニアについて一通り説明しましたが、この講演の準備のため色々調べてみた中で、筋肉からはマイオカインというホルモンが分泌されていることを知り、皆さんにお伝えしました。マイオカインは30種類以上あり、大腸がんリスクを減らす、インスリンを分泌させたりブドウ糖の細胞への取り込みを促すという糖尿病に良い作用、他に血管を拡張させる作用などもあるようです。 今まで正直なところ我々内科医は「筋肉なんてただ手足を動かすためだけのもの」と心臓、肝臓や腎臓などの内臓より下にみていましたが、実は筋肉はこのようなマイオカインを出したり、水分を貯める、熱を産生するといった重要な働きをしていることが解明されてきました。
さらに「筋肉の6~7割は下半身にある」「老化現象で、下半身の筋肉は上半身の筋肉より3倍速く減少する」「高齢になっても筋トレで筋肉量、筋力は増える」というお話をしました。トレーニングは色々ありますが、日常生活の中に取り入れるなら「階段をゆっくり降りる」というのも良い方法です。勢いで降りてゆくのではなく、一段一秒かけて太ももに負荷を感じながらゆっくり降りてゆくのです。
私のことを言うと、診察で患者さんを診察室に入ってもらうたびにできるだけ立ち上がるようにしています。これは礼儀ということでしているのですが、ひそかに足の筋トレの意味もあります。坐るときもゆっくり椅子に腰を下ろしてゆくようにしています。(このことは 栗原 毅 著『食べて飲んで中性脂肪とコレステロールをへらす本』(興陽館)の記述を参考にしました)