私が子供の頃、祖母がさかんに食事の酸性・アルカリ性ということにこだわり、「肉はダメ、野菜を食べなあかん」と言って野菜の食事を勧めたり、豆乳を自分で作って私に飲ませたりしていました。当時1960~70年頃はそのような食事の酸性・アルカリ性ということがちょっとしたブームになっていたのです。
酸性・アルカリ性というのはph(ペーハー)という数値で示されていて、7.0が中性、それより高ければアルカリ性、低ければ酸性となります。私も医師になり、動脈血はほぼph(ペーハー)7.4前後に保たれている、つまり弱アルカリ性になっており、それは呼吸と腎臓の働きで調整されていることを学び、ちょっと食事を変えたぐらいで体内の酸性・アルカリ性が大きく変わるはずはないという考えに至り、意識の外にありました。医学の常識からはかけ離れた考えであるとしてブームも去り、誰も食事の酸性・アルカリ性などとは言わなくなっていました。
ところが先日、腎臓の治療に関する記事を読んでいたら、「CKD(慢性腎臓病)治療ガイドライン」という本に「代謝性アシドーシスを有するCKD患者では、内因性酸産生量を抑制し、腎機能悪化を抑制する可能性があるため、アルカリ性食品(野菜や果物の摂取など)による食事療法を提案する」とはっきり書かれていることを見つけ、びっくりしました。現代の標準的な医学でも食事の酸性・アルカリ性はある程度認められているということです。
最近写真のような和田洋巳(元京都大学医学部呼吸器外科教授)という先生が書かれた「がん劇的寛解」という本を読み、進行がんであってもアルカリ食で生存率が改善することが論文で報告されていること知りました。体内の酸性・アルカリ性は尿のphで調べることになっていて、ドイツの栄養学の専門家がどんな食品がどれぐらい尿のphを変えることができるかきちんと数値を論文で発表していることも書かれていました。祖母が信奉していたのも決して荒唐無稽な話ではなかったのです。
試しに自分の尿のphを測ってみましたが6で酸性でした。野菜を摂るように気を付けているのに少しショックです。和田先生の本では野菜を一日400g摂るように書かれています。そこまではとてもできませんが、食事で尿のphがどれぐらい変わるか自分の体で実験しようと思います。