こんにちは。気温のアップダウンが大きくてついていくのが大変な毎日ですね。
スギ花粉症の方にはそろそろつらい日が始まっていると思います。
院長もスギ、ヒノキの花粉症です。思い返せば学生のころから春になるといつも風邪をひいていると思っていました。本当の風邪もあったのでしょうが、その時から花粉症だったのでしょう。
学校が京都でしたので、北のほうには有名な北山杉がたくさん植わっており、たくさんの花粉が毎年供給される環境でした。
本格的に困ってきたのは、仕事を始めてからで、外科医でしたから長時間手をあらったまま鼻もかめずにマスクの中がずるずるになった日々でした。さすがになんとかしないとということになり、同僚に見てもらうと
『そりゃ、おまえ、花粉症やで』
と一蹴されてしまい、なんだかショックだったのを覚えています。その当時はまだ、抗アレルギー薬も今のようにいいのがなくて、飲むととても眠くなりました。
手術中も眠くて眠くて本当に困っていました。眠いか、鼻水垂れるか。どっちをとるかでした。
しばらくして、眠くならないのが【売り】の抗アレルギー剤が出てきましたのでさっそく試しましたが、やっぱりほのかに眠たかったですね。それと、最盛期には全く効かないので、ステロイドを飲んだり、点眼点鼻したり、必死でごまかしていました。
春になると外出を可能な限り控えて(院長はスギヒノキなので5月まで出られませんでした)、外出しなければならないときは、ゴーグルとマスクを装備し、服装はナイロン系の花粉が付着してもすぐ叩き落とせるような素材にし、ぼうしも必需品でした。
花粉症のひどい仲間のうちでは当たり前の装備でしたが、一般にはかなり奇異の目でみられてちょっと辛かったです。
室内でも強力な空気清浄機を何台もそろえ、ポータブル用の清浄機も持っていました。
そんなつらい日々の中、あきらめの中で、同僚が
『漢方薬ええで、ねむくならへんよ』
と教えてくれたのを、半信半疑で、しかし藁にも縋る思いでためしてみることにしたのです。
最初に試したのは【小青龍湯】でした。薬局でも最もポピュラーな、そして花粉症の時期には在庫が少なくなる漢方薬です。今でこそ、風邪治療にも頻繁に使用する優れものの認識を院長も持っていますが、その当時のまったく知識のなかった院長は、必死に覚悟を決めて飲んでみました。
不思議でした。なんかとても後味がすっぱい(生薬 五味子のせいです)変な感じでしたが、鼻水が止まりました。本当にびっくりしました。なによりも、眠くならずに一日が過ごせて本当に良かったと思いました。
それ以来、漢方薬のいい利用法を追求するため、勉強し、自分を使って実験し知見をためてまいりました。
アレルギー治療の世界には、減感作療法という奥の手があります。簡単にいえば、アレルギーのもとに徐々に触れていくことで、アレルギーのもとに対する感受性を鈍くしていく方法で、根本的な治療であるといえます。ただし、その人にとって危険なアレルギー物質を投与するわけで、アナフィラキシーなど過敏反応を引き起こす可能性はあり、誰にでもできる方法ではありません。少なくとも、アレルギー専門医ではない院長にはハードルが高い医療です。
それ以外の花粉症治療薬は、基本的にはヒスタミンというアレルギーを起こす物質の受容体(細胞の膜についているヒスタミンとつながることでアレルギーのスイッチを入れるトリガーのようなもの)をブロックすることが、その薬理作用で、漢方薬が行っている鼻水を止める、咳を止める、鼻詰まりを解消する、目のかゆみを止めるということよりは根本に近いかもしれませんが、減感作療法よりは対症的です。
そして何よりも、これは自分の感覚なので、個人差は多いとも思いますが、花粉飛散の極期には無力であるという事実が、自分的にはあります。あまりのつらさに極量服用も試みたこともありますが、もうどうにもなりませんでした。
それに比較して、漢方薬は眠さやだるさとは無縁に、症状を軽快してくれましたし、効果も従来の抗アレルギー薬に遜色ない、むしろ即効性や短期間の勝負では漢方薬のほうが勝るように実感されました。
いらい、院長はずっと漢方薬をアレルギー性鼻炎の主軸に据えて自己治療をしています。
スギ花粉症の有病率は30%程度という報告もあります。3人に一人は春が憂鬱な季節になっているわけですね。
ふるやまクリニックでも1月半ばから徐々にアレルギー性鼻炎の治療薬をもとめて来院される方が増えてきました。
院長は自身の経験をもとに、少しでも地域の患者さんにより快適な回答を見つけてほしいので、取るものもとりあえず、スギヒノキ花粉症に対するブログを一気に書き上げた次第です。
院長の花粉症対策
1) 予防
予防は、何よりも大切です。不要不急の外出自粛(よく耳にするようになりましたが)が効果的です。あとは、帽子、眼鏡、マスク(コロナ以前からN95使っていました)、花粉のつかない服装は大事です。
頻繁な洗顔も有効です。顔もかゆいですよね。
2) 治療
治療法は症状別に行っています。
#1鼻水
#2鼻づまり
#3目のかゆみ
#4顔のかゆみ
#5のどのかゆみ
#6夜間の呼吸苦 咳の頻発
に大きく分けて、薬剤も使い分けます。院長は極期は無茶すると喘息用症状も出現します。吸入もいいですが漢方薬のほうがマイルドで楽です。もちろん、喘息症状が続くときは漢方だけでなくきっちりステロイド吸入をしています。
また#3の目のかゆみには長い間苦しめられていた記憶があり、対処法を教わった時には、そしてその威力を実感したときにはとてもうれしかったことがいまでも忘れられません。一つは、目に付着した花粉の除去の方法です。抗アレルギー薬やステロイドの目薬を点眼しただけでは、アレルギーのもとが結膜に付いたままに上から薬を塗るようなものでちょっといただけないです。しっかりとアレルギーのもとを除去してから点眼したほうがずっといいと思います。洗い流すのは流水が一番効果的ですが、真水を目に入れるととにかく痛いです。また、カップ状の受け皿に洗眼水をいれて洗う方法もまぶたにいっぱい花粉が残って瞼がかゆくて仕方がなくなりますのでこれもちょっといただけません。
理想的な方法は、昔の眼科の診療所で診察の時に豪快に目をあらわれたあの感じです。生理食塩水を使って洗えばしみることもなく十分に洗浄できるように思います。携帯に便利なのはコンタクトレンズ用の生理食塩水の点眼薬です。ケチらずにいっぱい洗いましょう。そのあとに点眼薬を使うと大変よくききますよ。洗った後はしっかり拭ってください。液体が瞼で乾くとカップ洗浄と同じことになりますので。
もちろん漢方薬でも大変即効性のあるアレルギー性結膜炎治療に使える製剤があります。詳しくは外来で院長にお尋ねください。
花粉症の時期は気道の粘膜も敏感になって脆弱になります。細菌やウイルスに対する防御力も極点に低下し、たいへん風邪をひきやすくなります。急性の上気道炎や気管支炎、副鼻腔炎は花粉によるものかウイルス細菌によるものか、特に熱発していない場合は非常にわかりにくいことがあります。
細菌性の場合は抗生物質が大変有効ですが、病原微生物による気道炎症では圧倒的にウイルス性の可能性が高く、ほとんどのウイルスに対する抗ウイルス薬は存在していません。
気道の炎症である風邪症候群には基本的に対症療法が全てです。
そういった意味でも粘膜結膜の炎症である花粉症も、風邪症候群も漢方薬をともに上手に使用してやることが、無理なく疾患をコントロールするのによい方法ではないかと考えます。
人間は個人個人で、個体差もあり、また考え方も異なりますので、解決方法はいろいろあっていいと思います。院長はこれまでの人生の中で漢方診療に出会い、自身の苦しみの一部分を開放することができました。
また、これまでの診療の中で、漢方薬をうまく使うことで同じように苦しみから解放された多くの患者さんを診てまいりました。
たかが、花粉症ではありますが、現在の治療や、今使っている薬に限界を感じた時には、漢方薬も試してみてはどうでしょうか。
漢方薬は対症療法として優れた効果を発揮することができる場合もたくさんあります。また、西洋の薬剤では困難な体質改善も可能です。
興味のある方はこのシーズンに一度試してみられてはいかがでしょうか。もちろん、会う場合もそうでない場合もあると思います。花粉症の方は毎年決まって何年もつらい思いをされているので、ある意味目の肥えた患者さんだといえるでしょう。そういう方にぜひ試していただければと思います。