月別アーカイブ: 2019年8月

職場のメンタルヘルス(その19)

千里中央大阪府豊中市北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科メンタルヘルスケア科)・復職支援リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の19回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖産業精神保健の基本問題(産業メンタルヘルスの基本問題)〗(Ⅴ)
◎事例性の重視②
●「事例性」の考え方とそれを重視した産業メンタルヘルスへの取り組みⓐ
職場におけるメンタルヘルス不調への対応には、産業保健職などメンタルヘルス職、主治医である精神科医・心療内科医などメンタルヘルス科専門医に加えて、上司、人事労務管理者など、メンタルヘルス科専門医療職でないさまざまな立場の多職種の者が関与することになります。そうすることで、より適切なメンタルヘルス不調への対応がなされる場合が多いです。
産業精神保健活動(産業メンタルヘルス活動)の大きな特徴の一つに「事例性;caseness」を重視することがあります。「事例性」という用語は、これまで二つの意味で使用されてきました。
一つは、メンタルヘルスの評価対象となるメンタルヘルス不調者が、メンタルヘルス疾患であるか、メンタルヘルス疾患であるとしたらメンタルヘルス診断メンタルヘルス疾患の重症度はどのようであるか(「事例性」に対して「疾病性;illness」と称されることがある)ではなく、メンタルヘルス不調者本人以前のメンタルヘルス状態からどのように偏奇しているか、所属する職場の平均からどの程度偏奇しているかを指します(狭義の「事例性」)。何らかの偏奇がみられる場合を「事例性あり」とするのです。
もう一つは、当該メンタルヘルス不調者がそのメンタルヘルス不調によって、所属する職場でどのように不利なメンタルヘルス状況あるいは不当なメンタルヘルス状況に置かれて苦痛を感じているか、そして周囲の者もそのメンタルヘルス不調のためにどのような影響を受けているかという意味です(広義の「事例性」)。メンタルヘルス不調者本人の立場が悪くなっていたり、周囲が迷惑を被っていたりした場合「事例性あり」とし、その程度がひどいと「事例性が強い(大きい)」などと表現します。
この狭義と広義の「事例性」との中間に、メンタルヘルス不調者本人が苦痛を感じていても、周囲への影響がみられない場合は、事例性があるとはみなさないという見方もあります。
産業精神保健では、広義の事例性(産業メンタルヘルスでは、広義の事例性)を扱います。職場で事例化したメンタルヘルス状態、あるいは事例化が懸念されるメンタルヘルス状態メンタルヘルス不調者本人の変化や職場への影響)を多面的にメンタルヘルス評価し、そのメンタルヘルス評価をもとにして、当該メンタルヘルス不調者および職場(上司、同僚あるいは諸制度など)に働きかけを行って、事態の収束やメンタルヘルス不調の発生予防を図るのです。職場でのメンタルヘルス不調の発生予防を図るためには、メンタルヘルス科専門医療職以外の職場関係者の関与が欠かせないです。
抑うつ症状などメンタルヘルス症状を呈し、業務効率が低下しているメンタルヘルス不調者を例にとってみましょう。事例性を重視するとは、まず当該メンタルヘルス不調者がこのメンタルヘルス状態のために、職場内でどのようなメンタルヘルス評価や扱いを受ける(例:業務処理能力を低く評価される、担当業務を担うにふさわしくない者と判断される)か、周囲はどのような影響を受ける(例:チームとしての生産性が低下する、当該メンタルヘルス不調者ができない分の仕事を分け合うことで業務負担が増す、当該メンタルヘルス不調者への配慮のためストレスが高まる)かを十分に調査し、当該メンタルヘルス不調者および当該メンタルヘルス不調者を取り巻く職場に、以前と比べ、全体としてどのようなメンタルヘルスの歪みが生じているかを詳しくメンタルヘルス評価することです。そして、次にメンタルヘルス不調者本人や職場への働きかけを通して、この職場全体でのメンタルヘルスの歪みを修復したり、新たな安定化を促したりします。
当該メンタルヘルス不調者本人抑うつ症状などメンタルヘルス症状が持続し、メンタルヘルス科専門治療を受けていないのであれば、メンタルヘルス科への受診勧奨メンタルヘルス科専門医師精神科医師・心療内科医師)の紹介を行い、主治医(心療内科医・精神科医)との連携の中でメンタルヘルス状態の回復の見込みを推定し、メンタルヘルス不調者本人の同意を得たうえで、職場に対して、メンタルヘルス不調者本人への対応方法、業務分担などに関する助言を行います。上司との話し合いの結果、人事労務管理部署に一時的な人員の補充を提言することがあるかも知れないです。上司や同僚が、メンタルヘルス不調者本人との関わりの中で、ストレスを過度に高めることのないように、産業メンタルヘルス活動の一環として彼らの悩みを聴いたり、助言をしたりすることも重要になるでしょう。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科メンタルヘルス科)・職場復帰支援リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


臨床心理士の吉田です。

今週は雨が続いており、どんよりとした雰囲気のせいか、体が少し重く感じます。ややぬるめのお湯で全身浴するとたいへんリラックスできるので、意識的に行うようにしています。
気分転換といえば、先日、映画“アラジン”を観てきました。映像と音楽が素晴らしく、あっという間の2時間でした。映画館ならではの臨場感もあるのでしょうか、たまには非日常を楽しむことの大切さを実感しています。
千里中央杉浦こころのクリニックでは、カウンセリング・心理検査でお話をお聴きすることができます。
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職場のメンタルヘルス(その18)

千里中央大阪府豊中市北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科メンタルヘルスケア科)・復職支援リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の18回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖産業精神保健の基本問題(産業メンタルヘルスの基本問題)〗(Ⅳ)
◎事例性の重視①
「メンタルヘルス不調」とは
⇒産業精神保健(産業メンタルヘルス)は、「メンタルヘルス不調」を取り組みの対象とします。メンタルヘルス不調とは、「労働者の心の健康(労働者のメンタルヘルス)の保持増進のための指針」(メンタルヘルス指針)で示された概念(表1)であり、以前「メンタルヘルス不全」と称されていたメンタルヘルス状態と同義です。「メンタルヘルス不調」という概念が、疫学やメンタルヘルス科臨床的メンタルヘルス科治療戦略のために提唱されたものではなく、「国際疾病分類第10版(ICD-10)」第Ⅴ章や「米国精神医学会のメンタルヘルス障害の診断と統計のためのマニュアル(DSM-Ⅳ-TR)」との関連付けはなされていないです。
労働者が、何らかの原因でメンタルヘルスの不調をきたすと、仕事面にもさまざまな影響が現れます。メンタルヘルス不調による影響は、メンタルヘルスの不調が一定の診断基準を満たすことで定義されるメンタルヘルス疾患でなくても生じうる変化です。メンタルヘルス疾患の診断がつくかどうかは、メンタルヘルス不調への対応の進め方を検討する際に議論になることはあっても、職場で何らかのメンタルヘルス不調への対応を行うべきかどうかには直接関係しないです。換言すれば、「メンタルヘルス不調」という枠組みは、産業精神保健の重要な守備範囲(産業メンタルヘルスの重要な守備範囲)を示していると言えます。したがって、既存のメンタルヘルス科診断に対応するものではないから「メンタルヘルス不調」の枠組みを排除すべきという意見があるとすれば、的外れというしかないです。
「メンタルヘルス不調」の枠組み具体的な産業メンタルヘルスへの取り組みに結び付ける役割を果たしているのが、「事例性」の概念です。
◇表1 「メンタルヘルス不調」の定義
メンタルヘルスおよび行動の障害に分類されるメンタルヘルス障害や自殺のみならず、ストレスや強い悩み、不安など、労働者のメンタルヘルス、社会生活および生活の質に影響を与える可能性のあるメンタルヘルス的および行動上の問題を幅広く含むものをいう。』
「労働者の心の健康の保持増進(労働者のメンタルヘルスの保持増進)のための指針」(メンタルヘルス指針(2006))による
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科メンタルヘルス科)・職場復帰支援リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


職場のメンタルヘルス(その17)

千里中央大阪府豊中市北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科メンタルヘルスケア科)・復職支援リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の17回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖産業精神保健の基本問題(産業メンタルヘルスの基本問題)〗(Ⅲ)
◎産業精神保健の概念(産業メンタルヘルスの概念)③
●産業精神保健(産業メンタルヘルス)活動の特徴:他の産業保健活動との比較
⇒他の産業保健活動と比較して、産業精神保健活動(産業メンタルヘルス活動)に特徴的な点として、以下の事項が挙げられます。
①人事労務管理部門との連携がより重要となること
・配置転換、職場復帰時リワーク時)などにおける就業上の措置といったメンタルヘルス問題を避けては通れないメンタルヘルス不調者の例が多いため。
・長期にわたって休業に至るメンタルヘルス不調者の例も少なくなく、そのメンタルヘルス不調者の一部については、雇用の継続や雇用契約のメンタルヘルス問題が生じることがあるため。
②1例の対応に多くの時間を要する場合が多いこと
・外傷や身体疾患に比べ、メンタルヘルス不調では、業務遂行能力を推定することが困難な例が多いため。
・主治医(精神科医・心療内科医)、家族との十分な連携が必要であるため
うつ症状などメンタルヘルス症状の再燃メンタルヘルス疾患の再発のみられる例が高率であるため。
当該メンタルヘルス不調者に対して不適切な処遇、対応がなされやすいこと
うつ症状などメンタルヘルス症状に起因する当該メンタルヘルス不調者の言動に対する理解不足が起きやすいため。
・他方、現場の知恵によって、極めて適切な対応が当該メンタルヘルス不調者になされている例があることも強調しておきたいです。
メンタルヘルス不調者本人の希望に沿った配慮が、メンタルヘルス状態の安定やメンタルヘルス不調の改善に必ずしもよい結果を与えるとは限らないこと
うつ病などメンタルヘルス疾患の病状によって、当該メンタルヘルス不調者本来の判断力などが損なわれていることがあるため。
当該メンタルヘルス不調者の希望うつ病などメンタルヘルス症状(例:焦燥感不安など)を背景としていることがあるため。
当該メンタルヘルス不調者本人の希望の内容が、職場の上司、同僚の理解や同意を得られないものであった場合、中長期的には当該メンタルヘルス不調者本人の職場での立場を悪くする可能性があるため。
メンタルヘルス問題の所在がわかりにくいこと
・同様の職場環境に置かれても、他の要因(職場や仕事以外のストレス要因メンタルヘルス不調者個人の素因など)によって、メンタルヘルス不調の生じ方が大きく異なりやすいため。
・産業保健職などメンタルヘルス職が得られるメンタルヘルス不調者個人メンタルヘルス情報の内容に偏りが生じやすいため。具体的には、家庭内でのメンタルヘルス情報が得られにくいこと、現場からのメンタルヘルス情報ルートが固定しがちであることなどによります。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科メンタルヘルス科)・職場復帰支援リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


職場のメンタルヘルス(その16)

千里中央大阪府豊中市北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科メンタルヘルスケア科)・復職支援リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の16回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖産業精神保健の基本問題(産業メンタルヘルスの基本問題)〗(Ⅱ)
◎産業精神保健の概念(産業メンタルヘルスの概念)②
●産業保健の一部としての産業精神保健(産業メンタルヘルス
⇒前述(2019年8月26日掲載)したように、多くの事業場において、産業精神保健活動(産業メンタルヘルス活動)は、産業保健活動あるいは安全衛生活動の一部として行われます。
ILO/WHO合同委員会報告書は、産業保健の目指すところを「すべての職業における労働者の最高度の身体的、メンタルヘルス的及び社会的ウェルビーイングの増進と保持;労働者全体について、彼らの作業条件に起因する健康からの離脱の防止;健康に不利な要因に起因する危険からの就業中の労働者の保護;彼らの生理学的、メンタルヘルス的能力に適応した職業的環境への労働者の配置と保持、まとめると:人への作業の適応とその仕事へのそれぞれの人の適応」とまとめています。ここでは、生産性の向上を第一義の目的とはしていない点にも注目したいです。産業保健は、結果として生産性の向上に寄与するかも知れないが、直接そのために行うものではないと読み取ることができるのです。
過去に出版された産業精神保健の啓発書(産業メンタルヘルスの啓発書)の中で、「企業における精神衛生管理(企業におけるメンタルヘルス管理)の第一目標は、あくまでもいかにして働く人々の精神の健康(働く人々のメンタルヘルス)を守り、労働者のメンタルヘルスを高めるかということに向けられるべきである。精神衛生管理活動(メンタルヘルス管理活動)を正しく展開することによって、企業にとっても、労働力の確保、生産性の向上が期待できるとしても、これは決して第一義的なものではない。メンタルヘルス管理活動の視点を誤るならば、精神衛生管理(メンタルヘルス管理)というものが単に人事管理の一つの手段にすぎなくなり、不適応者やメンタルヘルス障害者をただ職場から排除するための手段に利用される恐れがある」と述べられているが、これは、産業保健職などメンタルヘルス職にとって、今日でも肝に銘じなければならない事項です。産業保健職などメンタルヘルス職は、産業メンタルヘルスの視点の多様性を理解しながらも、自らの産業メンタルヘルス活動職場のメンタルヘルス活動から逸脱していないかを自戒していく必要があります。加えて、外部メンタルヘルス専門機関精神科・心療内科)と連携してメンタルヘルス相談活動メンタルヘルス教育産業メンタルヘルス研修を行う場合にも、産業メンタルヘルスの複数の側面・視点を事前に確認し、すり合わせておくべきです。
産業保健における問題解決には、一定の手順に従って、労働衛生(産業保健とほぼ同義)の3管理である「作業環境管理」、「作業管理」、「健康管理」を効果的に進める必要があり、そのためには、労働者および管理監督者に対する教育、情報提供(労働衛生教育)が重要です。これらが全体として、うまく機能するように管理することを総括管理といいます。労働衛生の3管理、労働衛生教育、総括管理は、労働衛生の5本柱と称されることもあります。最近では、労働安全衛生マネジメントシステム、リスクマネジメントの手法の導入も重要視されています。
産業精神保健活動も、産業保健活動の一部(産業メンタルヘルス活動も、産業保健活動の一部)である以上、この考え方を適用すべきです。個々の労働者のメンタルヘルス不調の評価ばかりに目を向けて、職場のストレス要因への働きかけ(作業環境管理、作業管理に該当する)を軽視することがあってはならないです。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科メンタルヘルス科)・職場復帰支援リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


職場のメンタルヘルス(その15)

千里中央大阪府豊中市北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科メンタルヘルスケア科)・復職支援リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の15回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】〖産業精神保健の基本問題(産業メンタルヘルスの基本問題)〗(Ⅰ)
◎産業精神保健の概念(産業メンタルヘルスの概念)①
●産業精神保健の根幹と多様性(産業メンタルヘルスの根幹と多様性
⇒産業精神保健(産業メンタルヘルス)とは、働く人の精神面の健康(働く人のメンタルヘルス)を扱う領域であり、「職場のメンタルヘルス活動あるいは職場のメンタルヘルス対策)」、「勤労者の心の健康問題(勤労者のメンタルヘルス不調)あるいは勤労者の心の健康問題対策(勤労者のメンタルヘルス不調対策)」などの表現とほぼ同義です。したがって、広義には、経営層の精神健康(経営層のメンタルヘルス)や精神科臨床(メンタルヘルス科臨床)における患者であるメンタルヘルス不調者メンタルヘルス科治療なども、産業メンタルヘルスの概念に含まれうることになります。しかし、一般には、経営層を除く労働者を産業メンタルヘルスの対象とし、労働の場である職場に直接何らかの関わりを持ったメンタルヘルスへの取り組みの範囲に限定して産業メンタルヘルスが使用されることが多いです。産業メンタルヘルスの中核は、職場内の産業精神保健(職場内の産業メンタルヘルス)活動の一環として位置づけられるものであり、精神科あるいは心療内科臨床メンタルヘルスケア科臨床)に従事するメンタルヘルス科専門医精神科医・心療内科医)のメンタルヘルス活動は、そのメンタルヘルス活動が職場関係者との関わりの中で行われるものに限り、産業メンタルヘルスの概念に含まれると言えます。
一方で、産業精神保健には、複数の側面・視点(産業メンタルヘルスには、複数の側面・視点)もあります。①労働者のメンタルヘルスを保持・増進するメンタルヘルス活動としての視点、②メンタルヘルス不調者あるいはメンタルヘルス不調者の社会参加へのメンタルヘルス支援に関する視点、③事業者責任を履行するための職場管理的視点、④生産性の維持・向上を主眼とする経営的視点などです。これら複数の側面・視点を基にした産業メンタルヘルス活動は、多くの点で重なり合いながら、他方相容れにくい部分も残しています。最近は、その相容れにくい産業メンタルヘルス活動の部分を無視して、あるいは曖昧にしたまま職場のメンタルヘルス対策のあり方が論じられる傾向にあるが、実務的には産業メンタルヘルス活動の優先順位の立て方、産業メンタルヘルス活動の効果評価の仕方、人事労務管理上の最終判断などで、メンタルヘルススタッフ関係者間で職場のメンタルヘルス上の立場の違いに由来するズレを認識せざるを得ない場面が少なくないです。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科メンタルヘルス科)・職場復帰支援リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


職場のメンタルヘルス(その14)

千里中央大阪府豊中市北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科メンタルヘルスケア科)・復職支援リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の14回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】◎産業精神保健(産業メンタルヘルス)活動における今後のメンタルヘルス課題(Ⅱ)
メンタルヘルスに関する安全配慮義務メンタルヘルス情報などプライバシーへの配慮
メンタルヘルス関連裁判の判例で示されるように、昨今の企業には、心の健康に関する安全(健康)配慮義務(メンタルヘルスに関する安全(健康)配慮義務)の履行が強く求められています。こういったメンタルヘルスに関する安全配慮義務の流れのなか、企業のリスクマネジメントの観点からは、従業員のメンタルヘルス情報などプライバシーよりもメンタルヘルスに関する安全配慮義務の視点が強調される傾向があるが、職場での個人のメンタルヘルス情報などプライバシーの侵害も民法上の不法行為として損害賠償責任が問われうる事項であることを忘れてはならないです(民法709条)。産業精神保健活動のほとんど(産業メンタルヘルス活動のほとんど)において、個人のメンタルヘルス情報などプライバシーへの配慮は不可欠であり、最近のメンタルヘルス情報などプライバシーの考えが、個人のメンタルヘルス情報を自分で管理する権利としてとらえられていることを考えると、基本的にすべて個人のメンタルヘルス情報の取り扱いは従業員の同意を得る必要があると考えるべきです。
また、およそメンタルヘルス相談活動の利用頻度は、そのメンタルヘルス相談システムの守秘性の高さに比例すると考えられ、産業精神保健活動(産業メンタルヘルス活動)の質や評価も従業員個人のメンタルヘルス情報などプライバシーへの配慮の仕方に大きく依存していると思われます。
●企業ポリシーの一環としてのメンタルヘルス活動
職場のメンタルヘルス活動等を実効的に行うためには、事業者のより深いメンタルヘルスへの理解と主体的なメンタルヘルスへの姿勢が欠かせないことは明確です。海外の企業におけるメンタルヘルス活動は、企業のリスクマネジメントだけを目的に行われてはいないです。事業者が従業員を大事にすることは企業の利益に通じると考えるからメンタルヘルス活動は行われているのであり、企業のポリシーに則ったメンタルヘルス活動です。産業保健スタッフなどメンタルヘルススタッフも、単に事業者に対してメンタルヘルスへの理解を求めるだけでなく、きちんとしたメンタルヘルス評価手法を行いながら、メンタルヘルス活動の効果を証明していくならば、事業者もより高い視点でメンタルヘルス活動にかかわるようになるでしょう。また、人事・労務部門と協力して、生産性に直結する労働者のワークモチベーションやQWL(quality of working life;労働生活の質)、心理的報酬を高めるためのメンタルヘルス施策などの組織メンタルヘルス的なアプローチは、今後表面化してくる成果主義や裁量労働の進展に伴う新たなメンタルヘルスの問題への布石として企業が求めるメンタルヘルス活動方針とも一致するものとなるでしょう。
職場のメンタルヘルス体制うつ病などメンタルヘルス疾患対策
⇒ここでは職場のメンタルヘルスについて概説しました。うつ病などメンタルヘルス疾患という医学的側面だけでなく心理社会的な側面からのアプローチも重要な意味をもつメンタルヘルス疾患を扱うためには、メンタルヘルス不調者本人、職場、メンタルヘルス不調者を支えるメンタルヘルススタッフ、そして時には家族も含めた有機的な連携と、しっかりとした職場のメンタルヘルス体制づくりが必要となります。したがって、職場のうつ病対策など職場のメンタルヘルス疾患対策を進めていくプロセスは、職場のメンタルヘルスに必要なことだけでなく成熟した人と人との関係や職場環境をつくるのに必要なプロセスでもあり、働きがいのある職場をつくっていくための不可欠なステップであるといえます。現実には数多くのメンタルヘルスの課題が残されているが、これらのメンタルヘルス課題を克服していくなかで得られるものはメンタルヘルス不調者だけでなく企業や組織にとっても少なくないです。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科メンタルヘルス科)・職場復帰支援リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


臨床心理士の吉田です。

昨日は高校野球の決勝戦が無事に終わりましたね。野球のルールに詳しいわけではありませんが、それぞれのドラマに毎年感動させてもらっています。高校野球の閉幕とともに、夏の終わり、秋の訪れを感じます。夜になると少しずつではありますが、風が涼しく感じることもあるように思います。とはいえ、まだまだ暑い日が続きますので、体を休めてオンとオフを意識しながら過したいと思います。
4月より、カウンセリングおよび検査の受付が月曜日から土曜日(水曜・土曜は午前のみ)に拡大しました。
千里中央杉浦こころのクリニックでは、カウンセリング・心理検査でお話をお聴きすることができます。お気軽にご相談ください。


職場のメンタルヘルス(その13)

千里中央大阪府豊中市北摂千里ニュータウン)、心療内科 精神科メンタルヘルスケア科)・復職支援リワークおよびリワークプログラム)協力医療機関「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「職場のメンタルヘルス」の13回目です。引き続き、職場のメンタルヘルスについて詳しく触れたいと思います。
【続き→】◎産業精神保健(産業メンタルヘルス)活動における今後のメンタルヘルス課題(Ⅰ)
●産業保健スタッフなどメンタルヘルススタッフメンタルヘルス相談への対応能力
産業保健スタッフなどメンタルヘルススタッフは、事業場の心の健康づくり対策(事業場のメンタルヘルス対策)のあらゆる場面において、メンタルヘルス不調者と管理監督者をメンタルヘルス支援しなければならないです。特に、メンタルヘルス不調者からのメンタルヘルス相談対応においては、メンタルヘルス不調者メンタルヘルス状態を把握するとともに、メンタルヘルス不調者がかかえているようなメンタルヘルス面の問題保健指導レベルのメンタルヘルス問題なのか、専門的なメンタルヘルス科治療レベルメンタルヘルス問題なのか、または職場へのメンタルヘルス的な介入が必要なレベルメンタルヘルス問題なのかなどについて、判断しなければならないです。メンタルヘルス疾患に関する労災や民事訴訟が急増するなか、少なくとも専門的なメンタルヘルス科治療が必要メンタルヘルス状態であるか否か、仕事でのストレスの軽減がぜひとも必要なメンタルヘルス状態であるのか否かといったことについて、ある程度正確なメンタルヘルス状態に関するアセスメント(見立て)ができないと、企業の安全配慮義務をメンタルヘルスの専門的な立場からサポートするといったメンタルヘルス的な役割は果たせないでしょう。なかでも現場において最も遭遇する頻度の高いうつ状態などメンタルヘルス不調に関するアセスメントは重要です。
うつ状態などメンタルヘルス不調については、一般的に考えられている以上にメンタルヘルス科治療の対象になる割合が高いが、メンタルヘルススタッフがある程度自信をもってメンタルヘルス状態に関するアセスメントができるようになると、メンタルヘルス科受診への動機づけもスムーズに行われるようになります。メンタルヘルススタッフ自身が、メンタルヘルス専門家精神科医・心療内科医)のメンタルヘルス科治療の対象になるのかどうかはっきり自信がもてないメンタルヘルス状態精神科や心療内科などメンタルヘルス科への受診メンタルヘルス不調者に勧めても、メンタルヘルス科への受診行動に結びつく確率は高くはならないです。しかしながら、多くの産業保健スタッフなどメンタルヘルススタッフは、身体疾患に関する知識に対してメンタルヘルス疾患に関する知識メンタルヘルス状態に関するアセスメントの技術が相対的に低い傾向がみられます。例えば、高血圧症のケースのように、メンタルヘルス不調者に対しても、そのまま経過観察でよいか、睡眠の取り方などに関する保健指導だけでよいのか、もしくはメンタルヘルス科治療メンタルヘルス上の措置が必要かどうかなどきちんと責任もってメンタルヘルス状態に関するアセスメントできなければ産業保健スタッフなどメンタルヘルススタッフとしての役割を果たすことはできないです。
最近では、産業保健スタッフなどメンタルヘルススタッフ向けうつ病などメンタルヘルス疾患を中心としたメンタルヘルス教育が盛んに行われるようになっているが、職場のメンタルヘルスにおいては知識教育だけでは対応できないようなメンタルヘルス相談のケースも少なくないため、常にメンタルヘルス専門家精神科医師・心療内科医師)と連携できるような職場のメンタルヘルス態勢を整えておくべきでしょう。今後のメンタルヘルス教育においては職場外のメンタルヘルス専門家心療内科医・精神科医)によるスーパービジョンを受けながらのメンタルヘルス実践教育も検討されるべきかもしれないです。
自殺防止へのメンタルヘルス対応
⇒本来の産業精神保健活動(本来の産業メンタルヘルス活動)のなかに自殺予防の視点をどの程度含めるかについてはまだ多くの疑問が残されています。また自殺防止対策は本来、国レベルで考えるべき大きなメンタルヘルス問題であり、企業で自殺防止のための総合的な職場メンタルヘルスプログラムを展開できるものでもないです。しかしながら、企業においては、職場のメンタルヘルス活動の結果として自殺が防止されることを期待されているのが現実であり、たとえ職場のメンタルヘルス活動が部分的ではあっても自殺予防に結びつけることをめざすべきでしょう。自殺防止に対しては、事業者が過重労働防止など責任ある労務管理を遂行することが何よりも大事なことであるが、産業精神保健活動(産業メンタルヘルス活動)においても自殺の大きな原因疾患であるうつ状態など職場のメンタルヘルス不調および職場うつ病などメンタルヘルス疾患予防メンタルヘルス対策を推進することは、自殺予防へのメンタルヘルス上の取り組みとして有用なことだと考えられます。
以上、千里中央駅直結千里ライフサイエンスセンタービル16階・豊中市心療内科メンタルヘルス科)・職場復帰支援リワーク支援およびリワーク支援プログラム)協力医療機関「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。


火・木曜日担当医の葛原です。

ゴルフの全英女子オープンで優勝した渋野選手の軽井沢での最終ホール、惜しかった!あの笑顔は最高。これから応援。男子プロの松山選手も今シーズン最終戦、頑張れ!
梅雨明け後の8月から連日暑い日が続いてますが、皆様にはいかがお過ごしでしょうか?ただし、相変わらず職場での人間関係に馴染めず、精神的ストレスにより、夜眠れなく中途覚醒早朝覚醒したり、朝がきても熟眠障害疲れがとれなくて起床できず、日内変動など朝のメンタルヘルス不調は続いてませんか?不眠症による生活リズムの乱れ昼夜逆転し、毎朝会社へ出勤するのが億劫で、最近遅刻や欠勤・早退など勤怠の乱れが増えてませんか?何とか会社へ出勤できても、朝のメンタルヘルス不調により、気分の憂うつ落ち込み・集中力の低下で、仕事がはかどらずにミスをくり返すなど、仕事のパフォーマンスや業務遂行能力の低下は認められませんか?また、梅雨明けの急激な気温上昇や天候不良の影響で、頭痛めまい動悸倦怠感など自律神経失調症食欲不振による体調不良はないですか?夕方以降も漠然とした不安や焦り・イライラなどメンタルヘルス症状が続いてませんか?休日、ストレス発散や気分転換したり、セルフメンタルヘルスケアしてもメンタルヘルス状態が回復せず、更なるメンタルヘルス不調の悪化が続く場合、うつ病などメンタルヘルス疾患の可能性もあるため、注意が必要です。メンタルヘルス疾患の早期発見・早期治療や、メンタルヘルス不調で会社を休業・休職する前に、メンタルヘルス全般についてご相談のある方は、是非一度、豊中市 千里中央心療内科メンタルヘルス科)「杉浦こころのクリニック」へ早めにお問い合わせ下さい。