リワークプログラム(その42)

千里中央大阪府 豊中市・千里ニュータウン)、心療内科 精神科「医療法人秀明会 杉浦こころのクリニック」の杉浦です。
今回は「リワークプログラム」の42回目です。引き続き、リワークプログラム(職場復帰支援プログラム)について詳しく触れたいと思います。
【続き→】■「医療リワーク」の4つの要素
医療機関において実施されているリワークプログラムの要素は、図1に示す4点に整理されます。すなわち、①同じメンタルヘルス疾患を持つ集団を対象に行われ、対人関係の問題を扱うことのできる場である。②主としてメンタルヘルス不調の“抑うつ状態”による休職者を対象とし、復職リワーク)と再休職の予防を目的とする。対象を限定したリワークプログラムとして集団での凝集性を高めるとともに、仲間と相互に支え合うことができる。③抗うつ薬による薬物療法と休養に続く第3の治療としての医学的リワークプログラムであり、メンタルヘルス不調の回復を指標として、段階的に負荷を高め、コメディカルとメンタルヘルス専門医精神科医・心療内科医)の協働によって実施され、復職準備性リワーク準備性)を確認する。④リワークプログラムの内容は、一言で言うと心理社会療法である。メンタルヘルス教育を行い、メンタルヘルス不調のモニタリングを通してメンタルヘルス不調の変化に備える。同時に、メンタルヘルス不調の発症メカニズムを自己理解することを通して服薬アドヒアランスを向上させる。また、心理療法を実施して認知を修正するとともに、うつ病で再休職しないような対処行動を身に付ける。
リワークの4要素
◎集団を対象に
同じメンタルヘルス疾患を持った仲間の存在
対人関係の問題を扱う、いわば実験室
◎対象を限定した
メンタルヘルス疾患治療中うつ病休職者
復職および再休職リワークおよび再休職)予防が目標
リワークプログラムの要素
うつ病治療の一環
開始条件があり一定のステップに加え中止もある
指標はメンタルヘルスの安定性メンタルヘルスの持続
復職準備性の評価リワーク準備性の評価)基準
◎心理社会療法
メンタルヘルス疾病教育、セルフマネジメント
服薬アドヒアランスの向上
メンタルヘルス不調発症メカニズムの自己理解
CBT(認知行動療法)などの心理療法の実施や応用等
◇図1 医療機関におけるリワークの4要素
医療リワーク」で行われるリワークプログラム復職後リワーク後)の就労継続期間に関するアウトカムに関してはほぼ一定の効果が認められ、治療効果として確立しています。
ストレスチェック制度との関連
平成27年12月から始まった50人以上の事業所におけるストレスチェック制度は、自殺対策をその源流とし、うつ病などのメンタルヘルス疾患をスクリーニングするメンタルヘルス対策二次予防の制度として策定されました。その後、紆余曲折を経て制度設計は大きく変化し、メンタルヘルス対策一次予防としての制度と位置付けられるに至りました。厚労省が推奨する57項目の内容を見れば、米国労働安全衛生研究所(NIOSH)の職業性ストレスモデルに準拠した制度であることは明白です。
この制度の運用によって労働者のメンタルヘルス疾患への罹患を予防すべく、働き方や職場環境への安全配慮が事業主によって行われることがきわめて重要な課題となります。そのためには個々の労働者の受診率を上げ、高リスク者に対しては産業医等による面談が行われ、必要な措置が職場で取られ、また、必要に応じて早期にメンタルヘルス疾患への治療を開始できる体制が取られる必要があります。そのような労働者に対する視点として、個別的な対応に加えて重要なのは、必須事項とはなっていないものの組織診断です。これは10人以上の部署において労働者個人が特定できない形でストレスチェックを集計し、事業主がその結果を取得することができるというものです。この結果こそ、企業にとってはメンタルヘルス対策を取るための重要な情報であり、本制度の大きな目標の1つであると理解していただきたいです。
以上、千里中央駅直結・千里セルシー3階・豊中市、心療内科「杉浦こころのクリニック」の杉浦でした。






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