みなさん、ご無沙汰しております。3月でおかげさまで当院も開業3年目に突入いたしました。何よりも皆様のご指導ご鞭撻の賜物と存じます。ありがとうございます。
さて、しばらくの間なかなかブログもアップできずにおりました。
世の中ではオミクロン株による第6波のために、大きな混乱が生じています。当院でもこれまで以上に、コロナウイルス感染症を身近に感じています。令和4年になってから、身近になったコロナ感染症に振り回されている感があります。
社会的にも、感染者の異常な増加による社会インフラの破綻があって感染症自体の恐怖もさることながら、保健所機能の破綻やそれに伴う医療や生活の崩壊が起こるために社会機能が停止、停滞することの困惑を直に感じておられるのではないでしょうか。
久しぶりに、お話する内容として適切かどうかは別としまして、外来で患者さんを拝見している時に高頻度で交わされる問答内容が表題のオシッコ問題です。
ある年齢を超えてきますと、男女問わず、オシッコの悩みがあるようで、なんとなく薬が出されて、なんとなくあまり効かなくて、でもしょうがないかとなっているような気がします。
そんな、なんだか、語るのも少し憚られ、病気の中心から外れてしまったようなオシッコ問題ですが、もっと丁寧に考えていけば
快適な生活に近づいていけるのでは、と日々感じます。
当院でもずっと前から排尿関連の薬剤を継続されている患者さんは多く、時間のある時によくよく伺ってみると、あまり改善していない方が多くみられます。
世の中の医学はやっぱり、日々進んでおり、昔とは違ういろんな便利なくすりが登場して来ているので、‘なんとなく’から脱出してみるのはいかがでしょうか。
オシッコのトラブルは 3つの段階に分かれています。
一つ目はおしっこを貯めている状況(蓄尿症状) 二つ目はおしっこをだす状況(排尿症状)、最後はオシッコを出した後(排尿後症状)です。
一つ目の蓄尿症状に関してまずはお話ししていきます。
一般に頻尿やねん、という言葉をよく伺いますが、医療的に病的な頻尿は一日8回以上の尿回数を指します。頻尿の症状も、昼だけのかた、夜だけの方、一日中の方がおられます。それぞれに対処方法が異なって来ます。
一日中頻尿の方は膀胱が小さくなって来ている可能性が高いです。
夜だけの方は、睡眠障害をお持ちの方も多く、時には睡眠時無呼吸症候群の治療を必要とする場合があります。また、下肢の筋肉量低下により、日中に下肢にむくみがたまり、それを上半身へ返せない(下肢のポンプ障害)ことが理由になっている方も大変多くみられます。
昼だけの方は少なく、水分の取りすぎや心因性が考えられます。
膀胱の活動性が高くなりすぎて(過活動膀胱)オシッコが我慢しづらくなったり、漏れたりする場合と、オシッコの出口が緩んでいるために腹圧をかけることで漏れてしまったりする場合があります。女性の場合特に、後者が多くみられます。
男性の場合は前立腺肥大によって膀胱からのおしっこの流れが悪くなり漏れ出しやすくなります。それ以外にも、脊髄に疾患があったり、糖尿病による神経障害があったり、または骨盤内の手術を受けたことが影響して漏れやすくなったりします。
排尿症状としては、キレが悪い、勢い良く出ない、お腹に力を入れないとオシッコが出ないなどの前立腺肥大による症状が中心となります。男性の症状です。
排尿後の症状は残尿感や全部出し切ったと思っているのにそのあとで漏れてくる症状です。
オシッコのトラブルを検査する場合には
血液検査(腎機能のチェック)
P S A(男性の場合 前立腺のチェック)
尿検査(血液 蛋白が混ざっていないか)
排尿後の超音波検査(残尿測定や前立腺の肥大のチェック)
を行うのが良いでしょう。
疾患と治療
- 過活動性膀胱
蓄尿症状がメインになりますが、半数以上は失禁を伴います。
オシッコが我慢しづらくなったり、漏れたりします。残尿を測定して、残尿が無ければ抗コリン薬(膀胱の過剰な収縮を止める)使用するのが第一選択になります。認知症を悪化させることもあり、認知症の方は避けた方が良いかもしれません。また、緑内障には使用してはいけません。
β3作動薬は膀胱を緩めて貯めれるようにします。ベオーバやベタニスが挙げられます。
最近は症状にもよりますが、こちらを使用することも多くなりました。
- 尿失禁
ギリギリまで我慢したけど漏れる、お腹に力を入れたら漏れるという場合です。女性に多くみられます。薬剤よりはトレーニングを重視します。骨盤底筋訓練などです。
その他の尿失禁としては、神経系統の障害で起こるもの(術後や糖尿病、神経疾患)や前立腺肥大が挙げられます。
- 前立腺肥大
排尿時障害や排尿後障害がメインになります。前立腺癌ではないことの確認が重要です。前立腺が過剰に大きくなりすぎる(30cc以上)と過活動性膀胱の症状を発現します。
標準的な薬剤はハルナールです。過活動性膀胱が存在する場合はフリバスを用います。尿閉や残尿がある場合はユリーフを使用します。ただし、これらの薬剤は性機能障害を引き起こします。
障害の程度は、ユリーフが最も強く、順にフリバス、ハルナールとなります。E D治療薬服用者に前立腺肥大の症状が緩和したことから、同系統の薬が治療に用いられ始めています。年齢の若い、性交渉を行う世代の前立腺肥大症の治療に使用しますが、心臓への副作用を注意しなければいけません。
頻尿が症状として残る場合はβ3作動薬を追加投与します。
薬剤での治療が限界を超えれば、手術的治療を考慮します。
- 夜間頻尿
この症状で困っている方が大変多いように感じています。
- 作りすぎ イ)貯めれない ウ)眠れない
の三つに分けられます。
- の作りすぎは、尿の作りすぎで、すなわち水分の過剰摂取が大半です。高齢の方は循環器の病気も抱えれおられる方が多いので水分の制限を提案するのは慎重になりますが、菜食主義の方など思いの外、野菜から水分を摂取しており、さらに水を飲むことで過剰に水分摂取をしていることも多く、水分の適切な調整で治ることもしばしば拝見します。
- の貯められないは、膀胱の貯留能力を改善するため、過活動性膀胱や前立腺肥大の薬剤を使用しますが、なかなかコントロールは困難です。
男性の場合は、症状がひどい場合は尿量自体を少なくする薬剤も使用可能です。使用には色々と制限がかかりますので医師とよく相談してください。
- の眠れない場合は、睡眠時無呼吸症候群の関与が多いです。そちらの治療を優先します。
以上、大まかに、かかりつけ医がみるおしっこの悩みの原因と解決法を述べて来ました。
かかりつけ医である私のような医師が、手持ちの機材で対応できる内容を記しました。難しい場合は、設備の整った病院の泌尿器科の応援を仰ぐ必要があると思います。
外来診察の場では、身近で多くの方が経験するおしっこの悩みに気軽に対応できるよう、患者さんの何気ない話にいつも耳を傾けるようにしています。