こんにちは。第一回目の免疫力増強のお話は、善玉菌の活用による腸活のお話でした。今回は、私の得意とする漢方治療のお話をさせていただこうと思います。
漢方薬が活躍していた古代中国の世界では、人はいとも簡単に感染症で命を落としていました。洋の東西を問わず、人類は長い間感染症に翻弄され続けてきました。ペニシリンなどの抗生物質の登場や、種痘などの予防接種の登場は人間の生存率を飛躍的に向上させたことは歴史が示しています。
私たちが今直面している新型コロナウイルスは、これまで人類が出会ったことのない未知のウイルスとの遭遇であったため、まさに昔の人間が直面した感染症の恐怖を味わっていることになりますね。
微生物を殺す有効な薬剤がない場合は、昔も今も症状を軽くする治療(対症療法)が中心となりますので、治るかどうかはどうしても本人の免疫の力や体力に頼らざるを得ません。
古代中国の医療はまさに感染症との戦いでした。
感染症という概念もわからず外から入ってきた邪悪なものをいかに追い払うことに血道をあげてきたのです。これを現代風に解釈すると、体内に入ってきた感染源に免疫力を高めて対抗するということにほかならず、そういう効能の薬剤がたくさん準備されています。
実際に現代の診療でもインフルエンザの治療の何番目かには麻黄湯という、解表(入ってきた外敵を打ち払う)薬が選択されますし、皆さんの良く知っている葛根湯も適切な使用を行えば素晴らしい効果を発揮する解表薬です。このような薬剤は、日本のそのままではないですが、今回のコロナウイルスの蔓延の際にも中国で実際に使用されています(現代の薬と併用しています)。実際の使用方法などは【COVID-19 感染症に対する漢方治療の考え方】として 金沢大学附属病院漢方医学科 小川 恵子先生が日本感染症学会のホームページにいち早く寄稿なさっています。
現行の西洋薬にはこのような効能を持つものはなく、私自身がこれまでインフルエンザなどの治療に使用してきた実感からすると、うまく西洋薬と組み合わせることで対応できる幅も増えるのではと感じています。
また、急な外敵との遭遇戦の免疫力強化ではなく、日ごろの免疫力強化としては補中益気湯などに効果があるかもしれません。こちらの薬剤も、インフルエンザの発症率低下や症状軽減などの効果が報告されているものです。
漢方薬には私たちが忘れ去った知恵や工夫がたくさん詰まっています。そのおかげで、今の西洋医療では手のとどかない症状や体調不良を治すことができることもしばしば経験します。
いまはどんな方法でもいいのでコロナウイルスと無関係でありたいと皆が願っているわけですので、あらゆる方法を講じて、未曽有のコロナ禍を乗り切っていきたいものです。