クリニックには不眠症で悩んでいる患者さんがたくさん来られます。
現在、日本では5人に1人に何らかの不眠があると言われています。不眠が続くと、仕事の効率が下がったり、生活習慣病(高血圧、糖尿病、心筋梗塞、脳梗塞など)や交通事故の誘因となります。また、うつ病の誘因になることもあり、不眠が長引くと生活に大きな支障をきたします。
今月、新しく「ベルソムラ」という不眠症の治療薬が発売されます。「ベル(belle)」はフランス語で美しい、「ソム(som)」は眠りを意味します。この薬は「オレキシン受容体拮抗薬」という、これまでにない新しいタイプの治療薬です。現在、この他に不眠症の治療薬には、ベンゾジアゼピン系、非ベンゾジアゼピン系、メラトニン受容体拮抗薬などがあります。
この治療薬について簡単に説明すると、下記のようになります。
<オレキシンとは?> オレキシンは脳内の視床下部という部位から分泌される物質で、「覚醒状態の維持」を担っています。わかりやすく言うと、オレキシンが分泌されると脳が覚醒し、逆にオレキシンがないと脳が覚醒しない、つまり眠くなります。
<ベルソムラが効く仕組み> オレキシン受容体拮抗薬である「ベルソムラ」は、オレキシン受容体をブロックし、オレキシンが働かない状態にすることで、脳を覚醒状態から睡眠状態へ移行させて眠りをもたらします。
この薬により不眠症の患者さんの治療の選択肢が広がり、不眠症からの回復につながればと期待しています。