動機づけ面接とはアメリカで開発された面談技法で、もともとはアルコール問題を抱える人への面接の方法でしたが、現在は色々な分野に応用されています。また技法自体もアップデートされています。非常に体系化されていて、効果も多くの論文で実証されています。
通常私が月一回オンラインで参加しているのは大阪市大(現大阪公立大)病院小児科におられた川村智行先生先生が主催されているDMMIという研究会で、糖尿病患者さんへの面接に応用することを目的としています。今回は特別なワークショップで、4月27日日曜日に10時から16時まで途中休憩1時間をはさんで練習しました。
誰でも健康に良いと理解している行動を、「やりたい、でもやりたくない」という2つの相反する気持ちを持っています。これを「両価性(アンビバレンス)」と言います。例えば「運動した方が体に良いことはわかっているしやりたい、でも仕事が終わってからはしんどい、また外に歩きに行くのは面倒だ」というようなものです。
これをOARS(日本では「オールズ」と呼ばれている)という技法を使って会話を交わし、この両価性を乗り越えて来談者(私たちの場合は患者さん)の目指す方向へ進んで行く、というのが動機づけ面接の目的だと理解しています。
OはAsking Open Question(開かれた質問)、AはAffirming(是認:患者さんの話を肯定する)、RはReflective Listening (聞き返し)、SはSummarizing(要約:患者さんの話を要約して伝え返す)の略です。
また患者さんが行動を変えようという思いが見える発言をチェンジトークと言いますが、これを拡げてゆく必要があります。これにも様々な技法があり、少し例を挙げると上の運動の話なら「以前は何か運動をされていましたか?」「もし時間があればどんな運動をしたいですか?」という形で聞いてゆく、あるいは「日常生活の中で簡単にできる運動がありますが紹介させてもらって良いですか?」と患者さんの許可を得て情報提供する方法などもあります。
このように書くとなんだかわざとらしい感じになりますが、単純に聞き返しているだけでは患者さんの「できない、しない理由」にずっと付き合ってゆくだけになり(これを維持トークといいます)、何をしているかわからなくなります。外来の現場でどう言ったら自然にチェンジトークを拡げられるかが求められます。
まるでサッカーでパスを受けた時、次に自分がドリブルするのか、シュートを打つのか、味方にパスをするのか、一瞬で判断するのに似ています。難しいですが興味深いです。