今回のブログのテーマは「潰瘍性大腸炎」です。
潰瘍性大腸炎は現代病ともいわれ、原因不明の腸炎でありながら、今なおどんどん罹患数が増えている病気です。
【潰瘍性大腸炎とは】
潰瘍性大腸炎は、大腸粘膜に慢性の炎症または潰瘍を起こす原因不明の疾患です。病変は直腸から連続的に、口側(S状結腸や下行結腸、上行結腸など)に広がる性質があります。
潰瘍性大腸炎の患者さんは年々増加しており、2022年時点で20万人を超えています。若い人(ピークは男性で20~24歳、女性では25~29歳)で発症しやすい病気ですが、50代でも認めることがあります。男女比は1:1で罹患率に男女差はありません。
【原因】
原因は今なお不明です。
自己免疫異常、腸内細菌、食生活習慣が関与していると考えられています。
また家族性に発症することもあり、何らかの遺伝子因子が関与していると考えられています。いくつかの遺伝子異常が指摘されているものの、遺伝子異常があっても必ずしも発症するわけではありません。遺伝子因子と食生活などの環境因子が複合的に関与していると考えられています。
【症状】
持続する血便(粘血便と言われ、レンガ色のねっとりとした出血)、下痢、腹痛があり、重症になると、発熱、体重減少、貧血、穿孔(腸に穴があく)を起こすこともあります。
また長期間(10年以上)の罹患で大腸がんのリスクが出てきます。
軽症の場合は症状がないこともあります。大腸がん検診である便潜血で陽性となり大腸内視鏡検査をして偶然、潰瘍性大腸炎と診断されることもあります。
症状は再燃と寛解を繰り返すのも特徴の一つです。
(潰瘍性大腸炎には活動期と寛解期があります。活動期は血便などの症状があり、内視鏡でも腸に炎症がある状態です。寛解期は炎症が治まり、症状もなく大腸内視鏡検査でも炎症が消失している状態です)
また潰瘍性大腸炎は腸以外にも症状が出ることがあります。関節炎、壊疽性膿皮症、口内炎などの間接、皮膚、粘膜に炎症を起こすことがあります。
【診断、検査】
問診(症状やその経過)、大腸内視鏡(生検組織検査)、便培養が行われます。
問診では、細菌性腸炎や薬剤腸炎と鑑別するために、食べ物の摂取状況や、内服歴を確認します。
潰瘍性大腸炎の最終的な大腸内視鏡検査で行われます。内視鏡の典型像では診断がつきやすいのですが、細菌性腸炎や薬剤性腸炎とも内視鏡所見が似ているため診断は困難なこともあります。便培養を行い、腸炎を起こす細菌がいないかチェックします。大腸粘膜の一部を採取する「生検」組織検査で病理診断を行います。
そこまで調べても最終的な診断がつかないことがあります。その場合、臨床の経過を見ていくことも大切です。(例えば、細菌性腸炎は一過性であるため、時間経過で消失します)
【分類】
分類には①部位別 ②症状別 ③病期と分かれています。
① 部位(病変の広がり)による分類
潰瘍性大腸炎は直腸から大腸の口側に連続的に病気が進行すると考えられています。
●直腸だけに炎症のある「直腸炎型」
●直腸やS状結腸などに炎症のある「左側結腸炎型」
●全大腸に炎症のある「全大腸炎型」
② 症状など臨床的な重症度分類
症状(排便回数、血便の有無、発熱の有無)や検査結果(貧血の有無、頻脈の有無、炎症反応の有無)によって、軽症、中等症、重症と分かれています。
③ 病期
●活動期 ●寛解期
【治療】
炎症の部位や 重症度、症状によって変わります。また潰瘍性大腸炎は原因不明の難病であり、「完治」することがないと考えられており、治療で炎症を抑え続けることが重要です。
軽症の場合は、5ASA製剤と言われる炎症を抑える薬が使われます。基本的には内服薬(リアルダ、アサコール、ペンタサ、サラゾピリン)が用いられます。直腸に炎症が残る場合や座薬を併用したり、左側結腸に炎症が残る場合は注腸剤を併用することがあります。
5ASA製剤で大事なことは「いかに成分を腸の粘膜にたどり着かせたか」によって効果に差が出ます。薬の投与量が多いほど効果が高くなり、少ないと効果が落ちます。治療をキチンと続ける(コンプライアンスを守る)ことがとても大切です。
中等症以上の場合は、ステロイドが使われることがあります。ステロイドには内服薬と注射があります。ステロイドには炎症を強力に抑える作用がありますが、一方で副作用も認められます。易感染性、糖尿病、消化性潰瘍、満月様顔貌、中心性肥満、高血圧、高脂血症、白内障、骨粗しょう症など、様々な副作用があります。
ステロイドは炎症を速やかに抑える寛解導入作用はありますが、寛解維持といって炎症を抑え続ける効果はありません。むしろ副作用がでるため、短期的に用いられます。2023年には、副作用を抑えたステロイド内服薬も発売されました。(薬品名:コレチメント)
そのほかにも血球成分除去療法(透析のような機械で、血液中から異常に活性化した白血球を除去して血液を戻す治療)や、免疫抑制剤や生物学的製剤など様々な治療が開発されてきています。
重症の場合は、入院治療となり、絶食点滴治療が行われます。ステロイドの点滴を含め集学的治療が行われます。
●外科的治療
多くの場合は、内科的治療で改善しますが、以下のような場合は手術(大腸全摘手術)が必要となる事があります。
✓内科的治療が無効な場合
✓大量の出血
✓穿孔
✓癌または癌を疑う所見がある
【潰瘍性大腸炎と大腸がん】
潰瘍性大腸炎の罹患期間が長い、炎症の持続時間が長いと大腸がんになるリスクが増えます。診断がついてから10年以上たつと大腸がんの罹患率が高くなります。
潰瘍性大腸炎からの大腸がんは、通常の大腸がんと異なり、大腸の炎症のあるところのどこから癌細胞がでてもおかしくありません。また癌細胞が粘膜の下で広がることもある事より、潰瘍性大腸炎から発症した大腸がんでは大腸全摘手術が行われます。(通常の大腸がんの場合は、がんの部位から上下20㎝程度の大腸を切除します)
以上、潰瘍性大腸炎について解説しました。
潰瘍性大腸炎が原因不明の病気ですが、様々な研究がおこなわれており、治療法も日進月歩しています。引き続きブログにて出来るだけ最新の情報をアップしていきます。
鎮静剤を使った楽な胃カメラ、鎮痛剤を使った痛くない大腸カメラを行う内視鏡専門クリニック2016年に開業し、年間約4000件の内視鏡検査を行っています。
JR森ノ宮駅直結、地下鉄森ノ宮駅から徒歩3分の好立地、大阪市内で京橋、玉造、東大阪からもアクセス良好です。
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2022年開業 大阪 堺筋本町⑨出口すぐの内視鏡専門クリニック(森ノ宮胃腸内視鏡ふじたクリニックの分院)鎮静剤麻酔を使った苦しくない胃カメラ、痛くない大腸カメラを行っています。胃がんの撲滅のためにピロリ菌治療、大腸がんの撲滅のために大腸ポリープ手術(日帰り)を積極的に行っています。
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