コロナ禍が始まりを告げて、もうすぐ2年半になります。
例のごとく、あえて細かい数字は抜きにしてここまでを大まかに振り返ってみたいと思います。
まず、コロナウイルスは主要な株だけをみてもアルファ、デルタ、オミクロンとそれぞれ相当に性質が違い、また同じ株でも感染した人の年齢や持病でも相当に結末が違う敵ですので、一言で総括することは困難です。
「コロナは~である」という短絡的な決めつけの論調の意見は全てコロナのごく一部の側面をみているに過ぎないと言えます。
特に近場に若い健康な人しかいない場合には感染しても重症者を見聞きすることがないため、その狭い見識を元にコロナは大したことない、対策やワクチンは全く不要だという極端な断定的思考に陥るようです。
医学は過去の多数のデータをみて話をする学問ですので、「私は2年前から~だと思っていて、ほらその通りになったでしょ。」という無責任な意見には基本的に耳を貸しません。
日本で大きく流行した株の中で一番破壊力が強かったのは去年の秋ごろに流行したデルタ株でしょう。
高齢者はもちろんのこと、30代や40代の健康な働き盛りの方でも時に激烈な経過をたどり、ワクチン接種の有無で若い人でも経過に比較的差が出た株です(その時期、私も10代以上の方にワクチン接種を推奨しました)。
あのままデルタ株が居座っていれば、社会が日常を目指すというのはなかなか難しかったかもしれません。
しかし、結果的には年末の少し前には相当に収束傾向となりしばし平和な時間が訪れました。
その後、年明けからオミクロンが主流となり一気に小児の世界にまで感染が広がりました。
オミクロンは感染力がずば抜けた株で、マスクやソーシャルディスタンスを心がけてインフルエンザがほとんど流行できないレベルの感染対策をした冬の日本社会でもあれほど大流行を起こしました(ゼロコロナを目指していた国でも方向転換を余儀なくされました)。
一方で破壊力はデルタよりだいぶん下がり、重症者の発生率は減少しました(ただ感染者数が今までの中で抜群に多かったので、結局死亡者数はオミクロンによるものが最多)。
小児の世界でも制御不能な感染拡大になりましたが、特に小児科世代で深刻な基礎疾患のない児では重症者はおろか、医学的に入院が必要な例も極めて少数に留まりました(入院の大部分は、症状の強い親御さんの付き添い入院)。
この半年で日本での小児のデータも相当蓄積されましたが、そこから言えることは「重篤な基礎疾患のない日本人の小児にとって、コロナのオミクロン株は人生を揺るがすウイルスではない」ということです。
これらのデータを元にすると、夏場の小児にとってコロナのオミクロン株より熱中症の方がよっぽど危険であることが分かり、屋外ではマスクをしなくていいではなく、屋外ではマスクを外すようにという推奨が出されるに至るわけです。
一番流行したオミクロン株が普段健康な日本人小児にとって大事にならなかったのは、ただのありがたい結果論であって「コロナなんてただのかぜなんだから、私は最初からマスクはいらないと言っていた。」という風に無責任に語ることを医学はしません。
実際、コロナウイルス全体を通して日本でも高齢の方を中心にたくさんの犠牲者が出ましたし、若い世代でも後遺症に悩まされている方もいます。また他国ではたくさんの小児も亡くなっています。
国や世代、株によるこれらの差を最初から断定することは不可能でしたので、特に日本はかなり慎重な路線を選択しましたが世界の中では今のところトータルで最も被害が少ない国の一つに数えられます。
今後の課題は、いかに締めるところは引き続き締め、緩めるところは緩めるかというところです。
小児や若者の教育や学び、恋愛の機会を取り戻すことも大事ですし、一方で高齢者など感染させてはいけない集団にコロナを届けないという努力ももちろん大事です。
小児に関しては感染を恐れ過ぎずに、夏場特にクーラーのないところや屋外ではマスクを外し様々な活動を再開していくこと、密になる室内では引き続きマスクなど感染対策をすることがおおむねの方針となるでしょう。
コロナワクチンに関しては、アルファ、デルタに対するよりも効果が落ちることも判明しており、小児に関しては今は接種を急ぐ必要はないかもしれません(重篤な基礎疾患のある児や、高齢者と同居している児などは主治医と相談の上、接種することは悪い選択肢ではありません)。
今後もコロナ事情は変化し続けますが、2022年6月28日時点の私の考えを示しました。