百日咳

百日咳が例年以上に流行しています。

百日咳はその名の通り、100日とは言わないまでも数週間から1.2か月に渡ってひどい咳が続く感染症です。

典型例では熱もなく鼻水もなく、ただただひたすら痰の絡まない乾いた咳こみが続き、ゲホゲホゲホゲホ、オエッとえづいて一段落するというサイクルを昼夜を問わず繰り返します(花粉症で鼻水があったり、前からの風邪で痰がからんだり、違う感染症がかぶって熱が出たり、例外はいくらでもありますが)。

0歳時、1歳時に受けた三種混合、四種混合または五種混合のワクチンでカバーされているため、4回接種が完了して間もない乳幼児の集団では比較的流行になりにくく、感染しても症状は比較的軽微です。

一方、接種して時間が経ってくると一部の児で免疫が薄まってくるために、小学校以上、特に10歳前後より年長の集団で小流行が断続的に発生しています。

現在、小学校高学年で二種混合のワクチンが公費で接種されていますが、これは百日咳をカバーしていません。

小学校低学年で百日咳ワクチンを公費で追加あるいは、この二種混合を三種混合に変更するなどの案が検討されていますが、まだ決定はしていません。

 

さて流行がある時期には、ひどい咳が長引いた際には検査が行われます。

様々な検査がありますが、最も一般的なのは血液検査で外の検査機関に提出する方法で、約5日~7日ほど結果判定までにかかります。

可能性がそれなりにある場合は、この検査を提出すると同時にクラリスというマクロライド系の抗生剤を開始します。

クラリスを始め、あらゆる薬は咳を抑えるのにはほとんど効果はありませんが、5日飲んだ時点で他者への感染力が大幅に下がり集団生活への復帰の条件となっています。

ある程度、咳が長引いた児で検査するため、百日咳が確定するのは多くの場合は咳のスタートから2週間から3週間くらいは経っていることが多いでしょう。

結果が出た時点で、クラリスが5日以上投与されているはずですので、百日咳が陽性だった場合も、診断とともに登園、登校許可証が発行される手筈となります(もちろん欠席は咳のひどさに応じてさらに延長も考慮されます)。

 

対策としては、

①病名に関わらず、咳が出たら可能な年齢、可能な範囲で早期からマスクを着用する。(マスクは自分のためではなく、人のためにする物です。咳はひどいが、マスクはしたくないというのはマナー違反です。)

②咳が7日~10日以上続く場合は、熱がなくても一度受診しましょう。百日咳の流行がある場合、特に小学生以上は意識をしましょう。

③受診の上、百日咳の可能性がどれくらい高いかによって、そのまま休園、休校を指示されるか、とりあえずマスクをしながらクラリス投与で登園、登校するかが判断されます。ただし、可能ならば検査結果判明まで休むことは周りの人にとってはありがたいことです。

 

実は百日咳は年長児にとっては、ひどい咳きこみは日常生活、社会生活にとっては厄介なものの、医学的には危険はほぼありません。いつかは収まります。

問題は、生後間もない赤ちゃんが感染した場合です。

ワクチンを未接種、あるいはまだ1回や2回しか受けていない状態で感染すると、咳きこみの連続で呼吸ができず、無呼吸発作から低酸素脳症を起こすことがあります。

令和7年の春にもすでに生後1か月半の児が百日咳で死亡したという悲しいニュースが入ってきました。

生後早期の赤ちゃんには、百日咳だけでなくできるだけ感染症を届けないようにしましょう。

ほとんどの厄介な感染症は高熱を伴うことが多いですが、例外的な感染症ですね。