熱性痙攣が収まった後に、ダイアップ座薬という痙攣を予防する薬を挿肛することがあります。これは一旦収まった後、また2回目の痙攣が起こる確率を下げる目的で行われる予防薬です。
ただ、最新のガイドライン上では必ず必要ではないとされています。
痙攣を抑える薬=脳の活動を抑える薬であるので、副作用としてうとうとしたり、ふらつくことをよく経験します。
そもそも同日に2回目の痙攣をするこは実は結構レアであること、ダイアップ座薬により逆に意識回復の判断が難しくなることがあることが理由として挙げられています。
以前はほぼ全ての例で痙攣後のダイアップを使用していたので、現在はちょうど過渡期と言えます。
当院を始め、まだ多くの医療機関では、痙攣が止まった後に意識がしっかり回復するのを確認してからダイアップ座薬を入れて帰宅させています。
この痙攣直後のダイアップ座薬と区別して考えるものとして、発熱した際に痙攣する前に使用するダイアップ座薬があります。
その1でお話したように、大部分の熱性痙攣は人生で1回目で終了すること、ダイアップに副作用があることから、こちらも以前のようにみんなに念のため入れるということは推奨されていません。
これも施設により少し適応の幅がありますが、①痙攣重積を起こした児、②5分以内ではあるが3回以上起こした児などを中心に熱のたびに予防投与を行うことが多いでしょう。
熱性痙攣は熱の出始め、上がり始めに集中して発生するので、予防投与の適応になったら、37.5度以上になったらとりあえずすぐ1回目の投与を行い、8時間後に2回目の投与を行います。
2回で1セットであり、その後に高熱が続いても3回目は投与しません。
特に1回目の投与はためらわず、元気でも熱が出てきたらすぐに投与しましょう。
ただし、2回目は熱がその後上がらなかった場合には投与せずに経過をみて、再度上昇することがあればその時だけ投与するのがよいでしょう。
ちなみに短い痙攣は何回繰り返しても、てんかんを始め脳に長期的な後遺症は残さないことが様々な研究ではっきりしており、これもダイアップ座薬の使用を減らす方向にシフトしていっている要因となります。
さて、熱性痙攣は熱の原因の病気の重症度とは無関係に起こるので、熱性痙攣の際は、熱と痙攣を分けて考えることが重要です。
痙攣自体が数分で自然に収まり、意識が速やかに回復した場合は、痙攣自体の医学的心配はほぼ不要です。
それと別に熱自体が重症かは、痙攣前の元気さや、必要に応じて他の検査で判断します。
熱性痙攣の時に絶対に見逃したくない細菌性髄膜炎は、ヒブと肺炎球菌ワクチンの公費化で激減しましたが、接種していない児では考慮に入れる必要があります。
発熱開始後24時間が経つと、とりあえず痙攣の心配は相当減りますので、熱自体の方に意識を向けて様子を見ていくのがよいでしょう。