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デルタ株の流行

新型コロナウイルスの流行が拡大しています。

高齢者を中心にワクチン接種も急速に進んでいますが、それをはるかに上回るスピードで感染が広がっています。

特に東京では感染力の極めて強いデルタ株(従来株とは別のウイルスと考えた方がよいくらい感染力が強い)が流行しており、感染者数、重症者数の増加に歯止めがかからない状況になっています。

65歳以上の感染者が2~3%と少ないのはやはりワクチンが非常に効果を発揮しているからですが、結果的に若い世代が感染者の中心となっており、重症病棟を埋めているのは40~50歳台の世代です。

また小児にも感染が広がり、保育園や小児の集まりでクラスターが発生し始めています。

従来株は不思議なことに小児を避けて通っていくような性質があり、また感染した児でも無症状やごく軽症がほとんどでした。

デルタ株は、小児にも遠慮なく感染し比較的症状がはっきりある児も多いことがこの一週間ほどで判明してきました。

引き続き重症例は少ないですが、10歳台では肺炎も散見されています(当院では現時点では新型コロナ検査はできませんので、園や周囲に感染者がいた場合や、検査を強く希望する場合には検査可能施設を受診してください。)。

「小児の世界は新型コロナから少し距離を置いて考えることができる」という段階から急に潮目が変わってきました。

園から新型コロナを家に持ち帰り、ワクチンを接種していない20~40歳台のワクチンが行き届いていない親御さん世代が巻き込まれるという流れが増えてくる可能性が高いです。

一番働き盛りの世代ですので、多数の感染者が一気に出ると社会が止まってしまうことが懸念されます。

小児自体は医学的には過度な心配は不要と思われますが、デルタ株が大阪でも増えて猛威を振るいつつありますので、とにかく大人がやられないようにするという気持ちを今以上に持つことは大事でしょう。

デルタ株の流行拡大により12歳以上の接種可能世代に関しても接種のメリットが大幅に跳ね上がったと言えますので、私自身の立場も前向きな方向に舵を切ります。中一のうちの長男も接種予約にトライします(実際には当分予約が取れなさそうですが)。


小児の新型コロナワクチンに関して

新型コロナワクチンの接種票が、12歳以上の小児にも届き始めています。

このワクチンはまだまだ開発から日が浅く、10代での使用経験も十分ではありません。

私の個人的見解としてはもうしばらく小児の接種は保留してよいのではないかと思っています。あくまで個人的見解です。

まず、副作用というデメリットとしては、発熱や腫れが主になります。若いほど程度が強いとは言え、医者の感覚的にはこれらは少し休めばよくなるものでそこまで大きい障害にはなりません。

若年者で接種後の心筋炎の報告が一定数あり、これはそれなりのデメリットにはなりうりますが、大半が軽症で頻度も高くないことから、これもいざ絶対に接種が必要という話になれば接種をやめるべきというほどの理由になるものでもありません。

ポイントは、接種のデメリットが大きいというより、メリットが小さいということです。

小児は新型コロナウイルス感染の被害者としてはメインターゲットではなく、また重症例も相当まれではあることから、いくらワクチンの予防効果が高いとは言っても、そもそも接種することのメリットがかなり少ないのではないかと考えています。

 

新型コロナのパンデミックの構造として、重症になる大人のために、重症にほとんどならない小児が生活を大きく制限されているという現状があります。

まずかかってはいけない大人たち(特に重症化しやすい高齢者や基礎疾患のある方)がしっかりと感染対策(希望者はワクチン接種も含めて)を行うことで、小児には今まで通りの暮らしをさせてあげる方向をゆくゆくは目指したいものです。

社会全体の感染を縮小させるためには小児にも接種を進めていくのは有効かもしれませんが、接種される小児個人にはメリットがかなり少ないため、接種を考慮するのは以下のような場合になるでしょう。

・高齢者の親族と住んでいる、または接触が多い場合(特に何らかの理由でその方たちが接種できない場合)

・先天性の疾患や、慢性の疾患などの手ごわい基礎疾患がある小児で、担当のDr.から接種を勧められた場合

・受験生(重症化を防ぐためというより、感染により塾に行ったり受験そのものが不可能になるリスクを減らす目的で。)

・近場で新型コロナの重症の方を知っており、接種を強く希望している場合

 

ところで、10代でも高校卒業以後は交友関係が広がり、食事会や飲酒の機会も増えることから感染の多い年代に入っていきます。中学生、高校生とは分けて大人よりの感覚で考えてもいいのではないかと思います。

 

注:繰り返しになりますが、これは現時点での私の個人的な意見で、Dr.によっても、また接種する方の背景によってもかなり判断は異なると思います。データが蓄積されてくれば私も接種に傾くかもしれません。また、このブログ以上の話はできませんので電話での個別の相談は控えて下さい。

 


新型コロナワクチン

6月10日(木)の診療後に、私とスタッフの大半が2回目のコロナワクチンを接種してきました。

コロナワクチンについての現時点における正確な情報をお伝えしたいと思います。

まず初めに、このブログはワクチン接種を強要したり、接種をしないという選択をした方を非難する意思は全くないことを明記しておきます。

 

まず、6月4日時点のデータで世界全体で20億回、6月9日時点のデータで日本で2000万回の接種が終了しています(開始は遅いが、一旦始まると驚異的スピードというのは日本の政治のいつものパターン)。

かつてこれほど開発から早い段階でこのようなとんでもない人数に接種されたワクチンはありません。

今分かっているデータ(ここでは今のところ日本で唯一接種可能なファイザー社のワクチンについて述べます)を参考にすれば、感染予防率90%以上と驚異的な効果を示し、さらに「短期的な」安全性は相当高いと言えます。

短期的には安全?しかしワクチン接種後に急死した方のニュースを聞いた記憶がある方は多いのではないでしょうか?

まず、そもそもワクチンと関係なく日本では1年間の間にどれくらいの方が亡くなっているのでしょうか。

2020年に厚生労働省が発表した速報によれば、年間死亡者数は138万4544人です。

つまり、1か月に11万ちょっとの方がお亡くなりになられているということです。

ある日、水を飲んだ日本人の中で1か月以内に亡くなる方が11万人いるということです。

ということは今日、日本人全員にもしコロナワクチンを一斉に接種することができたとすると、ワクチンのせいではなく1か月以内に11万人が自然に亡くなるはずです(もちろん高齢者中心に)。

また、コロナ前でも若い方ですら突然死というのはちょこちょこ起こっていて、現代の医学をもってしても原因を解明できないケースも多々あります。

本当にワクチンの副作用なのかどうかを調べるために、コロナワクチンを接種する以前と、接種した後で様々疾患になる率や死亡者数に変化があるのかを各国で慎重に検討しながら接種が進められていますが、現在のところ特に増加は認めません(アストラゼネカのワクチンで若年者において血栓症がやや増えるかもという報告があり、一旦若年者は保留になった件はさらにデータを解析中です。★最初モデルナと誤記載しておりました。訂正致します。)。

ワクチン接種後数日や数週間で亡くなられた方に関して、マスコミが大々的に報道しています。だいぶ前のブログで、マスコミによる前後関係と因果関係の意図的な取り違えの話をしましたが、最近のニュースでもそれを強く感じます。

ということで、短期的な副作用は、接種部位の腫れや発熱がメインになります。実際、うちのクリニックのスタッフでも38度ほどの発熱をきたした者もありますが、1日で仕事復帰できそうな程度にとどまっています。

それと忘れてはいけないのがアナフィラキシーで、これは中々予見が難しいです。世界全体では数万人に一人くらいですが、日本では軽いものも律儀に報告しているせいか1万人に一人くらい発生しています。

どんな高級な化粧品でも合わない人がいるように、これはどんな薬でも食品でも一定の割合で発生する避けられない反応です。

接種会場には我々医師、看護師が必要な薬剤や器具を事前に準備し待ち構えていますから、実際にアナフィラキシーを起こした方の全てが適切に良好に対応されています。

 

さて、効果が高いことは接種率が上がった複数の国で劇的に感染者数が減少したことから明らかであり、短期的にはどうも相当安全であるということは分かりました。

では、「長期的な」副作用はどうでしょうか。これに関しては理論上は重い副作用はないはずですが、ヒブや肺炎球菌、四種混合、BCG、B型肝炎、MR、水痘、おたふく、インフルエンザ、ロタワクチンのように何十年もの間積み重ねられてきた莫大な安全性のデータは存在していません。

しかし、少なくとも完全に間違っているのは、mRNAワクチンであるコロナワクチンを接種することで人体にワクチンの遺伝子が組み込まれるなどという意味不明な説です。

コロナウイルスの持つ遺伝情報の一部を持つワクチンを体に入れるのでこのような医学的には荒唐無稽な想像が出るのでしょうが、それはまるでカナダにちょっと留学して帰ってきたら遺伝学的にカナダ人になって帰ってきたというくらいありえません。

そもそもコロナを含め、風邪のウイルスに感染した場合、ワクチンのように一部どころか全遺伝情報がそのまま体に入るわけです。

そうするとウイルスの遺伝情報が体に刻み込まれ、子孫に遺伝することになるのでしょうか?

これですら、カナダに移住したら何十年かの後に、肉体がカナダ人に変貌を遂げるというくらい突拍子もない話ですから。

このようなあり得ない話はさておき、ワクチン接種後の長い時間の後に未知の副作用がある可能性は低いけれどもあるかどうか誰も知らないということです。

接種する場合にはそのような不確定要素も受け入れた上で決断して頂く必要があります。

一方で、全くと言っていいほど重症化がない小児がワクチンを接種する医学的メリットは個人単位ではほとんどないのかもしれません。接種しなくてもコロナが怖くないからです。

ただ、留学する場合などで参加資格として求められる可能性はあります。今後、海外でのデータがまた蓄積されていくことでしょう。

 

情報を正しく判断することは大事ですが、肝心の情報伝達を担うマスコミが正しい情報を伝えることを主目的にしていないようで、一般の方には何とも難しい時代です。


医者という仕事その12 「医学」と「医療」

医師としての道。

それはもちろんまず医学生の間、大量の教科書とにらめっこしながら膨大な知識を頭に叩き込み、そして医師国家試験をクリアして晴れて新米医師としての第一歩を踏み出すことから始まります。

必要かつ十分な情報が与えられ、4~5個の選択肢の中から絶対唯一の答えを選べばよかった「医学」から、様々な社会的背景を背負った生身の患者さんに向き合う「医療」への昇華が必要となり、どれだけ優秀な新人医師でも必ずたくさんの壁にぶち当たることになります。

 

医学的には早目に入院して手術が望ましいけれど、家には患者さんに頼り切った要介護の高齢の親御さんがいる。

輸血した方がより安全に救命できそうだが、宗教的な理由から可能な限り避けたいと希望されている。

手術は生命を危険に晒す可能性もあるが、本人はリスクを承知の上で強く全回復を目指して最大限の治療を求め、その後の人生への期待を訴えている。

医療体制の整った都会であればもう数日家で様子を見れそうだが、この離島には週に1回しか本土に行く船が来ない。

 

このような人間ひとりひとりの事情、価値観、家族背景、さらには病院や医院の能力を踏まえて実践するのが「医療」であるのです。

無数のデータから出た信頼できる一つの結論と言えるガイドライン(医学の結晶)から外れた「医療」が時に施されるのはそれらのファクターを考慮して医師が最終決定を下しているからだと言えるでしょう。

医師にはその裁量と重大な責任が任されているわけです。

 

逆に、医師個人の経験から独特の「医療」に走りすぎないこともとても重要です。

数十年前までは、ひとたび開業すると日々進歩していく「医学」から離れ、自分流の「医療」に突き進んでしまう医院がたくさんありました(時に、一部の医師は俗に言うトンデモ医療へと進化を遂げる場合も)。

今の時代はインターネットを通じて、最先端の情報、論文にアクセスすることができ、コロナ禍以降はオンラインで学会や研究会にも出席が可能となりました。

コロナを一例も治療してない私も、コロナに関して相当正確な知識を有していると思います(この後莫大な数の患児の診察を行っています)。

適切な「医療」を実践するための正しい「医学」を身に着けるためには、結局は医師になってからどれだけ勉強をして研鑽を積めるかというところにあるのです。

 

医師を志す子供たちへ。

医師の仕事は人の人生に触れるということ。先人達が残してくれた知識を吸収し、同世代の医師達の苦労の結実である最新の知識を取り入れ、その上で病ではなく人間に相対して医療を施すということ。それはとても尊く、とても医師である自分一人の人生で完結できるものではない。次の世代、またその次の世代がもっと幸せに暮らせるように、その進歩のバトンをつなぎ続けるという仕事。目指してほしい。このとてつもなく大変で、魅力的な世界を。


日本脳炎ワクチン枠

日本脳炎ワクチンが少量ですが入荷があり、いくつかの枠を再度オープンしてます。予約確認メールが送られてきた子にはワクチンを確保できておりますので、特に電話での確認は不要です。当日予約時間にお越しください。


午前診療時間の変更について

2021年2月15日(月)より午前の診療時間を9時~11時30分に変更いたします。ネット受付は11時までとなります。

手洗い、マスク着用が国民全体の習慣となり、結果として感染症が激減しています。それに伴い、感染症主体であった小児科の患者さんもずいぶん減ってきています(よいことです)。

少子化もなかなか改善が見えないこれから、小児科クリニックの運営は新たなステージに入ったと言えます。病気の子ども達を診ることも引き続き大事な仕事ですが、ワクチンを中心とした予防、健康維持がよりメインの役割になっていくと感じます。

現在11時以降の来院はほとんどない状況となっており、午前の終了を従来の12時から30分短縮します。御理解の程、よろしくお願いいたします。

 


子宮頸がんワクチン

十分な安全性が立証されたワクチンです。接種後に神経症状などか出るという患者さんの報告がありましたが、数多くの研究で無関係であることが分かっています。まだ元の接種体制までは戻っていませんが、再開の方向にようやく動き始めました。当院としてももちろん接種を推奨します。今年度の最初に市の広報にも接種可能施設として登録されていますが、コロナ禍により、診察時間内の接種枠を削っているため(感染症症状の子とワクチンで来院する子とが交差しないように)、子宮頸がんワクチンまで手がまわらなくなっているのが実情です。申し訳ありませんが、内科や産婦人科での接種をお願いいたします。


新型コロナ検査について

冬に向かって新型コロナ患者数は増えていく公算が高そうです。当院では新型コロナの検査はできませんので、「濃厚接触者」や「強い疑いのある児」は発熱相談窓口に電話の上、指示を受けて頂くようお願い致します。また「発熱のある大人の方」も診察は行っておりません。内科で相談、受診をして下さい。

新型コロナ受診相談センター
06-7166-9911(終日対応)

また大阪府では新型コロナにまつわる心の不安を聞いてくれる窓口が置かれています。誰かに聞いてもらうだけで少し楽になることもあるかもしれませんので、つらい時は電話をしてみましょう。

《相談電話番号》    0120-017-556 (フリーダイヤル  まるいな  こころ)
《開設期間》    令和2年10月1日~令和3年3月31日 (毎日 午前9時30分~午後5時  土日・祝日・年末年始も無休で実施)