小児科学会へ

数少ない当ブログファンの皆様、お待たせしました。

コロナ騒動で、この2,3年ブログもさぼりがちでしたが、これからまたたくさん徒然なるままに書き進めていこうと思っていますのでお付き合いの程よろしくお願いします。

さて、院長は4月14日(金)~16日(日)まで日本小児科学会へ出席するためクリニックをお休みいたします。今回は東京です。

開業した医師が一番苦労するのは、いかに最先端の医療を維持するのかという課題です。

複数のドクターで常に相談し、カンファレンスで意見を交換できた勤務医の時代から、1人で地域を守る開業医になった瞬間からその戦いは始まります(実際には市民病院の先生方に後ろに控えて頂いているので厳密には一人で戦っているわけではないのですが、それは今回はさておき)。

数十年前の開業医の先生方がその目標を達成することは中々難しく、実質的には学会や研究会に出席することでなんとかキャッチアップするとういうのが関の山だったことと推察します。

私は32歳というひと昔前から考えると非常に早い年齢で開業しましたが、その背景にはインターネットの発達により最新の情報に常にアクセスし続けられるという自信があったからです。

さらにこの数年はコロナも相まって研究会レベルのほとんどはオンライン対応になり、出席できる率も大幅にアップしました。

そんな中でも小児学会は小児科医にとって最も大きな年一回の全国規模の学会であり、日本中からものすごい数の専門医が集結します。

比較的たくさんの患者さんを診察させてもらっているおかげで、私は毎日さらに経験を積み、より高みへと一歩一歩前へ進んでおりますが、しょせん一人の医師がみている数など大阪全体、日本全体、ましてや世界全体では誤差の範囲です。

例えば私のみた2000例程度のコロナ患者さんのデータは、ややもすると非常に偏った特殊な症例群の可能性だってあります(実際重症の方は最初から市民病院クラスを受診する傾向があります)。

ですので、医療で大事なことはいかに多数のデータで話をできるかということに尽きます(ただしまれな病気や新しく発生した病気などは数少ない自分の経験を元に手探りで診察します。初期のコロナはまさにそれ)。

学会では多数の医師がそれぞれの経験した症例を持ち寄り、それを膨大なデータへと昇華し、お互いに知恵をしぼりあい、時には熱く議論しながらようやく正解に近いであろう仮設が生まれるという作業を繰り返しています。

一方で現在、SNSの発達により一般の方が個人の病気の経験を世界に発信できる時代となりました。

これはもちろん一般の患者さんに有用な情報をもたらす可能性があるのは言うまでもありませんが、このたった一例の症例を経験した発表者の発信力が強かった場合に、ややもするとそれがあたかも全ての人に当てはまる一般論であるかのような誤解を与えることがよくあります。

周囲で数人の人がたまたま軽症で終わった人が、コロナの対策なんて全く不要と吹聴したりするのはまさにこの例です。

同様に、経験の浅い新人の救急隊員が熱性痙攣は全員すぐ止まるから救急車は一切呼ばなくていいと言ってみたり、保母さんや学校の先生などの中に便秘は薬なんか飲まなくてもみんな食生活を気を付ければ必ず治ると信じ込んでいる方がいるのも、このように自分の経験した数少ない症例を全員そうだと思い込むという致命的な誤解が原因です。

そのように重症例を見たことがない、あるいは大規模なデータを知らない、一見説得力がある誤った知識を持った人が近くにいることは非常に不運なことです。

厄介なことにそのような方の中には本当に良かれと思って脅してくるような人までいますので一度捕まってしまうとその思考から抜け出すのは困難です。

そして医師も(私も)例外ではありません。

気を抜くとすぐに自分のみた数百例や数千例程度の経験が全てに適応できると勘違いしてしまうのです。

そのために我々は常に自分の経験していない症例をも経験値に加えるために、学会や研究会に足しげく通うのであります。

それでは行ってきます!またパワーアップして帰って参ります。






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