現在の熱の原因のトップはインフルエンザB型で、2番手がコロナとなっており、インフルエンザA型は出ているもののだいぶ減ってきました。
ずいぶん前にインフルエンザについてのブログで、検査をせずに陽性と診断するいわゆる「みなし陽性」が、なまじ検査をするより正確度が高いことがあるという話をしました。
またコロナの初期の頃にも、検査をせずにコロナと診断を下された方もたくさんいたと思います。
感染症の世界も刻一刻と状況が変わるため、このみなし陽性の考え方についても流動的に適応する必要があります。
まず、どんな時にみなし陽性は正確度が高くなるかについて見てみましょう。
いつも口を酸っぱくしてお話するように、検査は発熱の開始から早いほどに大幅に感度が下がり、検査の意義が低くなります。
日本の医療では(2024年1月時点)、インフルエンザやコロナ検査は全ての年代でやればやるほど売り上げが上がるので、少なくとも開業医の先生に今は検査しない方がいいよと言われた場合、患者さんのためを思って言ってくれていると考えて間違いありません。
早すぎる検査はお金がかかるだけでなく、痛みも1回分余計に増える可能性が高く、また本当はインフルエンザなのに陰性が出てしまうと「よかった」などと誤った印象を持ってしまい感染をより広げる結果となります(もちろん重症の例などウイルス量が非常に多そうな時は早い段階で検査をすることもありますが)。
またインフルエンザの薬というのはそれほど劇的な効果はありませんし、小さい子は苦すぎて飲めないこともとても多いこと、また薬を希望するにしても発熱から48時間以内は適応となりますから、「できるだけ早く検査をして、薬をもらう」ことを目指すと損をする可能性が高くなります(意識がおかしい時、呼吸がおかしい時は例外ですぐに病院へ!)。
確かにインフルエンザは手ごわい感染症で入院がいるほど症状がひどくなることも稀ではありませんから熱が長引いた時などは注意が必要ですが、薬を早く投与するかで元々健康な小児の入院率が劇的に下がるような効果はありません。
さて発熱12時間以上のいいタイミングで検査をした場合、検査キットはその実力を十分に発揮し、90%ちょっとのインフルエンザやコロナの患者さんを拾い上げることができます。
逆に言うと数%は発熱から十分な時間が経ってからも検査で「陰性」と出てしまうとういことです。
このため、インフルエンザやコロナの可能性がほぼ100%である時には検査をしない方が正確に診断を下せることになります。
これが「みなし陽性」と言われるものです。
以前は小学校高学年や中学校以上の子どもは、小さいうちにたくさんその他の高熱のウイルスの経験を積んでおり、他の家族がインフルエンザを発症した直後に熱を出した場合、それ以外の原因の可能性が極めて低かったため、そのような状況でかつ高熱の場合には検査を意図的にしないことでより正確な診断をすることがありました。
またコロナ初期の頃はもっと分かりやすく、家族の誰かがコロナに感染した時にはその他の家族はまるで犯罪者のように家に10日間軟禁されるというルールがありました。
さらにそもそも他の熱の原因が相当減っていたこと、および検査キットが不足していたことから、可能性が十分に高い患者さんをみなし陽性で診断することが多くありました。