インフルエンザその1

いよいよインフルエンザが流行するシーズンとなりました。

親御さんも保育園や幼稚園、学校の先生方も神経を尖らせる季節です。

今日はインフルエンザの特徴や対処法をできるだけ分かりやすくお話ししようと思います。

インフルエンザウイルスは「かぜを知ろう」でお話しした、数百種類あるかぜのウイルスの一つです。

他のかぜのように、咳や鼻水が出始めて、しばらくしてから熱が出る、というよりは、突然の高熱や関節痛からスタートして、「何これ、やばいぐらいしんどい」というのが多いパターンです。

あくまで風邪のウイルスの一つでありながら、やはり独特の注意を必要とするのも事実ですので、その特徴をみていきましょう。

 

①かぜのウイルスとしての特徴

・インフルエンザもかぜのウイルスの一つですから抗生剤は全く無効です。 (「かぜを知ろう」でお話ししたように、かぜには抗生剤は一切効きません。抗生剤を飲んだらかぜが早く治る、というのは完全に迷信、気のせいです。「念のため」で、飲めば飲むだけ損をします。)

・かぜの一つであり、肺炎や中耳炎など、こじらさない限りは勝手に治ります。ただし、こじらしてしまったら、他のかぜと同じく、そこからはじめて抗生剤の追加が必要となります。

・他のかぜと同様、一回かかる度に少しづつ免疫がつきます。軽い時は37度代で元気なままなんてこともありえます。

②インフルエンザウイルスとして特有の注意点

・毎年少しづつ顔を変えて(変異して)やって来るため、ある程度免疫のある大人でも他のかぜより症状が強く出る傾向があります。

・アデノウイルスのかぜ、RSウイルスのかぜとともに、迅速検査ができる数少ないかぜのうちの一つです。ただし、熱が出てから間もない場合には検査は無意味ですので、最低6時間、できれば12時間くらい経過してから行うのがよいでしょう。

・数百種類あるかぜの中でもしんどくなる子どもや大人が多いため、人類ががんばって早く治す薬を開発した唯一のかぜであります(タミフル、リレンザ、イナビル、ラピアクタ)。インフルエンザ以外のかぜには残念ながら早く治す薬は存在していません。

・うわごとを言ったり、興奮したり、時には暴れだしたり。インフルエンザは高熱に伴ってこのような神経症状が非常に多く報告されています。意識障害や痙攣がある場合には、例え深夜でも様子を見ずにすぐに病院を受診しましょう。(これらの症状は一時期タミフルの副作用ではないか、と疑われていましたが、内服していない児でも多数の報告があることから、薬による症状ではなくインフルエンザウイルス自体の症状とする考え方が主流です。薬を使う、使わないに関わらず、インフルエンザの時はこれらの神経症状に注意し、保護者の方は解熱まで決して目を離さないことがとても重要です。)

注:完全には結論は出ておらず、報告の多い10代では今でも念のためタミフルは避けることになってはいますが。

・ある一定の期間に人にうつす力がとても強く、それを過ぎると急速に感染力が低下するため、家での待機時間や登園・登校許可証を設定することがとても効果的なかぜです。水ぼうそうも同じような特徴を持っていますが、かかってしまったら、今度は人にうつさないようにしっかりこの期間を守ることを心がけましょう。

・かぜの中で唯一、ワクチンが開発されています。このワクチンのメインの目的は重症化して、命がおびやかされるような事態を防ぐことであり、かかったらどえらいことになりやすい高齢者の方や持病のある方には特に強く勧められます。もちろんかかる確率もある程度減らしますが、インフルエンザウイルスは感染力が強く、しっかり接種していてもかかることは多々あります。接種をした上でかかってしまった時には、「ワクチンをうったのにかかってしまった。」と落ち込むよりも、「もしワクチンをうっていなかったら、どれくらいひどいことになっていたのだろう?」と考え直す方が生産的かもしれません。

 

 

インフルエンザは、高齢者、心臓や肺に基礎疾患のある方、寝たきりの方などがかかると非常にこじらせやすく、時に命に関わるかぜです。

1年間に約1万人もの方が、インフルエンザに関連して亡くなっていると言われていますが、そのほとんどは上記のようなデリケートな方達です。

一方で、かぜの一つである以上は元々健康な大人や子供たちで、熱もそれほど高くないなど症状が軽い場合には実は治療薬は必須ではありません。(日本では、インフルエンザと診断されて治療薬を使うのは重症度に関わらず当たり前になっている現状ではありますが。)

ひとくくりで、「インフルエンザは怖い病気」と煽りたてるのは適切ではなく、患者さんごとに心配度は大きく変わってくるという認識が必要です。






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