解熱剤の上手な使い方その5

まとめです。

①熱をがっつり下げる程の強力なクーリングは単独で行うと悪寒の原因となり有害である。

②ほどほどにひんやりすることで本人が快適になるようなクーリングは有用である。

(おでこに貼る保冷剤は解熱効果は全くありませんが、気持ちよくなるなら是非どうぞ。本人が嫌がる場合、やるメリットはありませんので外しましょう。)

③小児で使用される解熱剤は上手に使えば極めて安全である。

(もちろん元気ならばいくら高熱でも使用は不要です。高熱自体は脳に何らかの長期的な影響を与えることはありません。解熱剤の使用は快適になるためであり、平熱にすることでもなく、脳を守ることでもありません。使ってしばらく楽そうにしていれば使った甲斐ありです。)

④解熱剤で高熱から平熱までガクンと下がってしまう場合や、効果が切れて熱が再上昇する際にかなりしんどそうな時は、減量を考慮するべきである。

(ただしこの熱の再上昇に伴い熱性痙攣の率が上昇する事実はないことが、大規模な複数の研究で示されています。減量するのは熱性痙攣を起こしにくくすることが目的ではなく、より快適に過ごすためです。解熱剤使用後に万が一熱性痙攣が起こっても、それは解熱剤のせいではありません)

 

☆おまけ ちなみにいわゆる熱中症は、設定温度が36.5度、実際体温が40度という状態ですから、治療は解熱剤ではなく、強力なクーリング単独となります。インフルエンザの時と同じく実際体温は40度ですが、起こっている病態生理は全く異なっており、「発熱」と区別して、熱中症のような高熱のことを「高体温」と言います。高体温の治療には解熱剤は不適切であり無効ですから、救急外来などで、熱中症だろうと言われて解熱剤が処方されることはありません。

 

このように、高熱は常に設定温度と実際温度の二つを意識しながら理解することが重要ですが、なぜか日本ではクーリングはどれだけ強力にやっても副作用がないという誤解が、医療関係者の中ですら根強いように感じます。

「病気の時のしんどい高熱は、解熱剤で適度に下げて快適に時間を稼ぐ」という原則を覚えておきましょう。

アセトアミノフェン(カロナール・アンヒバ座薬・アルピニ―座薬など)という有難い薬をこの世に誕生させてくれた先駆者達に感謝を。






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