月別アーカイブ: 2016年5月

iPS 細胞移植見送り

何だか蒸し暑く感じるこの頃ですね。咳や喉の痛みで受診される方が増えておりますので、お気をつけ下さいね。

さて、今回は少し残念な話です。

実際にiPS細胞を人に移植する臨床研究が、目の難病患者が対象に行われています。「加齢黄斑変性」と呼ぶ高齢者に多い疾患の患者自身の細胞からiPS細胞を作り、さらにシート状の網膜色素上皮細胞に育てたうえで患者の目に移植するのです。

何故「加齢黄斑変性」が最初のiPS研究に選ばれたかというと、

1.対象が高齢者であり、遺伝子異常を次世代に引き継ぐリスクが少ない。
2.網膜なので移植したiPS細胞の状態を観察することが容易である。

等の理由が挙げられています。

さて今回二例目のiPS細胞移植が予定されていたのですが、iPS細胞の遺伝子を解析したところ、「がん化に関わるとされる遺伝子変異が複数」と「遺伝情報の片方が欠ける変化」が見つかったのです。そのため二例目のiPS細胞移植は延期となり、今後の対応について専門家が意見交換してるとのことです。

難病治療などに新しい可能性を開くiPS細胞ですが、実際に臨床の現場で使えるようになるまでは、まだまだ時間がかかりそうですね。

.


キリンと高血圧

早速ですが「血圧が高いといわれた」と当院を受診された方に、高血圧をどの様に考えるか説明する時にキリンの話をすることがよくあります。(「キリン!!」と聞いて、是非内容を知りたいと思われた方は受診・・・・・ではなくこのブログを最後まで読んで下さい。)

先日ネットを見ていると、キリンの血圧(循環器)について上手に説明してある文章を見付けたので引用したいと思います。

『キリンにとって、心臓から2メートル上にある脳に血液を送るためには強力な心臓と、他の哺乳類の2倍の血圧が必要。水を飲むために頭を下げ、気絶せずに元の姿勢に戻るためには特殊な安全弁が要る。』

血圧が高くても(キリンのように)それに対抗できる強い血管があれば問題ないわけです。つまり高血圧は血圧が高いから問題なのではなく、高い血圧で血管が障害されるから問題になるわけです。

記事によると、『キリンと、キリンに最も近く、首の短いオカピのゲノムを比較』をしているとのことでした。血管を強くする遺伝子が見つかれば、高血圧になっても痛まない血管を作れるかもと思ったのですが、副作用で首が長くなってしまうかもしれませんね。

.


がん検診が「陽性」だったら

先週は、休日でブログも休みでしたので2週間ぶりのお目見えです。連休の疲れで午前中からあくびの連発してませんか?

さて、今回はがん検診で「陽性」と判定された場合について書いてみたいと思います。

多くの人の場合、がん検診で「陽性」(癌の疑いあり)と診断されると多くの人は「自分は癌なんだ」と理解すると思いますが、がん検診で「陽性」と診断された人の中で「癌でない人」がどれ位含まれているのかご存じですか?

単にがん検診で「陽性」が出た場合では、癌が存在しない(!)確率はおおよそ99%になります。(詰まり癌がある確率はたったの1%なのです。)

「でもがん検診の感度が70−90%じゃないんですか?」との声が聞こえてきそうですね。

実はがん検診で「陽性」と判定される場合には二通りあるのです。

①実際に癌があって、健診で「陽性」とされる場合。
②実際に癌は無くて、健診で「陽性」とされる場合。

健診で70−90%と言われているのは①の場合のみを考えた時の数字なのです。①の場合何らかの症状や変化があることが多いので、そのような物があれば要注意です。

しかし、がん検診で「陽性」と判定される人の多くが②の場合になります。実際に胃癌のレントゲン検査では、①782人 ②39,953人の割合です。(胃癌の検診は比較的感度が高いといわれています。)

さらに、癌があるのにがん検診で「陰性」とされる場合もあり、がん検診は受ければ白黒ハッキリする類のものでは無いのです。

何か体調異常があった場合に、放置せず受診をすることが大切なのです。

 

.