月別アーカイブ: 2016年7月

人の鼻腔から新抗生物質?!

ペニシリンが青カビから発見されて以来、抗生物質を見つけるには土壌などにいる微生物を調べるものと考えられてきました。しかし「灯台もと暗し」と言いましょうか、ごく身近にというより我々の体の中に新しい抗生物質の候補が見付かったのです。

ドイツのグループは、病気の原因となる黄色ブドウ球菌は約3割の人が常在菌として鼻腔などに持っているそうですが、残り7割の人には存在していない事に注目して、研究を行ったそうです。

研究グループは、「スタフィロコッカス・ルグドゥネンシス(S.lugdunensis)」が、黄色ブドウ球菌と闘う抗生物質を生成することを発見し、この化合物を「ルグドゥニン(Lugdunin)」命名したそうです。

人間の鼻腔にいる細菌が、病原性の細菌を抑制していたのです。

気軽に抗生物質を使うと、この様な常在菌が乱されて病原性を持つ薬剤耐性菌が増えやすい状況が生まれてくるかもしれません。

今後、人間から見付かった抗生物質が使われる時代が来るかも・・・・・・・・・・

 

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「ウナギ」と「恵方巻き」と「抗生物質」

暑い日が続いていますが、昨晩は少し過ごしやすかったです。さて、来週の土曜日は土用の丑の日ですので、うなぎ屋さんに「長い」行列が出来ることでしょう。(本日は「大暑」にあたるそうです。)

土用の丑の日にどうしてウナギを食べるようになったかと言えば、諸説ありますが平賀源内(江戸時代の発明家)が発案したとの説が有力です。

夏の時期にウナギの売り上げが減ると相談された平賀源内が、「丑の日にちなんで、“う”から始まる食べ物を食べると夏負けしない」との当時の風習を上手に取り入れてウナギの宣伝を勧めたそうです。見るからに栄養のありそうなウナギと以前からある風習が上手に結びついて、「土用の丑の日にはウナギを食べる」との習慣が広がったそうです。

次に、節分にその年の「恵方」の方角を向いて食べると縁起がよいといわれる「恵方巻き」ですが、大手コンビニチェーンの影響からか、近年関西地区から全国に広がりを見せています。

元々は豆まきとセットになって「春」の節分(立春の前日)の行事だったのですが、先日コンビニで「夏の恵方巻き」(?)を宣伝していました。確かに節分は年四回(立春・立夏・立秋・立冬の前日)ありますので、「節分には恵方巻き」との強固なイメージから、年に4回売ろうとする商魂をみて微笑んででしまいました。

実は強固に結びついたイメージは良くないことも起こすこともあります。「風邪の治療」と「抗生物質」は強く結びついていて、処方する方も貰う方も当然のようになっていることがあります。

抗生物質は細菌に効果はありますが、大半の風邪の原因であるウィルスには効かないのです。効かないだけなら良いのですが、以前から書いているように抗生物質が効かない「耐性菌」の問題があるのです。

先日、愛知県で呼吸器内科に入院、通院中の患者11人から、複数の抗生物質が効かない新型耐性菌「カルバペネム耐性腸内細菌科細菌」(CRE)を検出したとの発表がなされました。

11人全員が症状もないとのことですが、病気や手術をした際に耐性菌が暴れ出すと命の危険に晒されてしまうのです。強固なイメージから来る抗生物質の乱用が主な原因と考えられています。

本当に恐ろしいですね。

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VHSとPC-98と医薬品

本日のニュースで、ビデオ再生機(VHS)の生産が終了すると言っていました。皆さんの家にもまだ、昔に録画したテレビ番組や大きなカメラを肩に載せて撮影した家族の動画が入った、VHSのビデオテープがひっそりと埃をかぶっていませんか?

ビデオ再生機の生産が終了すると、ビデオテープを再生する方法が世の中から消えてしまって、テープに記録された情報が読み出せなくなってしまうのです。何だか寂しい感じがしますね。

コンピュータの世界でも同じ様なことが起こったのですが、こちらは「寂しい」と感傷的になるだけでは済まされない問題を含んでいたのです。

現在ウィンドウズマシーン(機)と呼ばれているコンピュータの前に、PC-98の愛称で呼ばれるコンピュータがあったのです。当時圧倒的シェアを誇っていたのですが、ウィンドウズマシーンの先駆けであるDOS/V互換機の登場により、徐々に衰退し2010年にはサポート終了となってしまいました。

困ったのが、PC-98を生産ラインの制御に使っていた工場で、環境を現在のウィンドウズマシーンに切り替えるには多大なコストがかかることからPC-98を使い続けているそうです。

ところが機械は壊れるもので、PC-98が不調になれば生産ラインが止まってしまい仕事にならないそうです。現在、中古市場や修理サービスで何とか繋いでいるものの、この先の展望は開けないとのことです。

実は、上記のような話と医療は全く無縁では無いのです。最近医学の世界でも驚きの発表がありました。特許の切れた医薬品を他社に売ってしまうと言うのです。

薬の販売は続けられるのですが、開発時の知見や発売後の有用な知識が引き継がれなくなるのでは?と心配になりました。(経済的理由を優先させているのでは・・・・・・?)

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8割以上が健診で『異常』

40歳以上のサラリーマンで、健診で主要な4項目で全て「基準範囲内」の人はたったの17%しかいなかったと、健康保険組合連合会(健保連)の調査でわかったそうです。受診者の半数に、治療が必要なレベルの異常が見付かっているそうです。

「健康な人」が「たった17%」と聞くと衝撃的なのですが、少し見方を変えてみると「成る程」とそのような結果になった理由が腑に落ちました。(よろしければ電卓片手に検証してみてください。)

まず健診受診者の半数が治療が必要なレベルの異常があると考えると、残りの人は50%になります。そして、各々の検査で検査で健康な人の90%が合格すると考えると、4項目のテストで全て「基準範囲内」に入る人の確率は・・・・・・(血圧2項目、脂質の検査が3項目、肝機能が3項目あるので全体で9項目と考えて)

0.5(50%) × 0.9(90%)を9回掛ける = 0.194(19.4%)

何だか近い数字が出ましたね。皆さんは、如何思われますか?「40歳以上のサラリーマンで健康な人は17%しかいない」と思ってしまうと数字のマジックに踊らされるのかもしれません。

この調査結果で本当に注目すべきは「17%」の方ではなく、「半数(50%)」の人が治療が必要なレベルの異常がある事実です。それ程多くの人が定期的に医療機関を受診してるとは到底思えないので、検査異常を心配しながら過ごしておれるのではないかと心配になりました。

医療機関の敷居は高いように思えますが、世の中怖い先生ばかりでありませんので、気楽に近くの「医院」を受診してみて下さい。「案ずるより生むが易し」ですよ。

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サーファーと納豆アレルギー

「納豆アレルギー」って聞いたことありますか?文字通り「納豆」に対する「アレルギー」なのですが、何故かサーファーなど長時間海の中に居ることが多いとの事です。(納豆アレルギーの約八割)

「サーファー」と「納豆」と聞いて、すんなりと腑に落ちる人は殆ど居ないのではないでしょうか?

かく言う私もその一人で、「日焼けしてビタミンDが・・・・・・」等と「風が吹けば桶屋が儲かる」的な思考の海原を漂ってしまいました。

「サーファー」と「納豆」という奇妙な組み合わせの謎を解いた横浜市大の猪又直子先生も不思議に思っていたそうなのですが、ある出来事をきっかけとして原因を理解できたそうです。

その出来事は、猪又先生が「納豆アレルギー」で診療していた患者さんが中華料理を食べた後、強いアレルギー反応を起こしたことなのです。その方が食べた中華料理の中に、今回の謎を解くキーとなる「クラゲ」が含まれていたのです。

調べてみると、納豆菌が産生するポリガンマグルタミン酸(納豆のネバネバに大量に含まれている)がクラゲの毒胞にも含まれていることを突き止め、クラゲにさされることにより「納豆」のポリガンマグルタミン酸に対するアレルギーが起きるメカニズムを明らかにしたのです。

このことは2014年に学会発表がなされたとのことですので、進歩した現代医学でもまだまだ解らないことが沢山あることを感じていただけたのではないかと思います。

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