糖尿病はどんな病気(6)

「糖尿病はどんな病気」とのテーマで書いてきましたが、まとめとして糖尿病治療について日頃思っていることを書いてみます。前回までのブログとは違ってエッセイに近いと思ってお読みください。私もつれづれなるままに書き連ねてみます・・・・・。

 

これまでのブログで書いてきたことを簡単にまとめますと、糖尿病の治療は

「膵臓の保護」 >> 「血糖降下療法」

であり、治療の目標を「膵臓の保護」に向ける事と書けると思います。

 

 なぜ循環器医が糖尿病の治療に対してこの様なことを言えるかといいますと、私が医者になり立ての頃に心不全の治療で同じ様な考え方の変化(パラダイムシフト)を経験しているからなのです。心不全は心臓のポンプ機能の低下により全身に十分な血液を送れない病態なのです。心不全の治療のため数多くの「心臓ポンプ機能強化薬(強心剤)」が開発され実際に患者さんに使われました。強心剤により一時的には全身に送られる血液量は増えるのですが、人により期間の差はありますがしばらくすると心臓ポンプ機能は坂を転がるように低下してしまうのです。循環器医の多くは「心不全は難治性の疾患で、長期に使用できる優れた強心剤が必要だ。」と思っていたのです。

 しかし、日本と北欧などで同時期に心不全の治療に「心臓ポンプ機能を低下させる薬(β遮断薬)」を用いると心不全が改善することが報告されたのです。この薬は心臓ポンプ機能を低下させるので、心不全の方に通常のように投与した場合は心不全を劇的に悪化させ、心不全の方にとっては毒だと考えられていたのです。しかし通常使用する量よりかなり少ない量から心機能を確認しながら増量していくことにより、心機能を改善できる事が出来たのです。つまり過剰な心臓の働きを抑制(心臓を休ませる)することにより、心機能の改善が得られたのです。

 

つまり心不全の治療は

「心臓の保護」(心臓を休ませる) >> 「心臓ポンプ機能の改善」

であり、治療の目標を「心臓の保護」に向ける必要が明らかになったのです。

 

 その後、患者さんにこのβ遮断薬治療を説明する場合に「痩せウマにむち打ってさらに疲弊させるのではなく、放牧して体力が回復すばまた荷物が運べるようになりますよね。心臓も休ませることにより回復してくるのです。」と口がすり切れるほど話してきました。この経験から、現在の糖尿病の治療を考え直すと血糖の降下ではなく「膵臓の保護」を目標としなければならない時期に来ているような気がしてならないのです。

 

みなさんはいかがお考えでしょうか?

 

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